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最高裁が「体罰」認定破棄 熊本の男児の訴え、認めず

2009年4月28日12時8分

 小学校2年の時の「体罰」をめぐって熊本県天草市の男子生徒(14)が同市に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(近藤崇晴裁判長)は28日、「体罰」があったと認定して市に賠償を命じた一、二審判決を破棄し、生徒の請求を棄却した。第三小法廷は、臨時講師が注意を聞かない生徒の胸をつかんで体を壁に押し当てて怒ったことを「許される教育的指導の範囲を逸脱せず、体罰にはあたらない」と判断した。

 最高裁が民事訴訟で教員の具体的な行為について「体罰でない」と判断したのは初めて。学校教育法は体罰を禁じているが、どのような行為が体罰にあたるかの具体的な例示はない。どの程度の指導が許されるのかが学校現場で議論になっているなか、幅広い影響がありそうだ。

 第三小法廷は、講師の行為が「有形力の行使」で「やや穏当を欠く」と認めたうえで、「指導するためにしたことで、悪ふざけの罰として肉体的苦痛を与えるために行われたのではない」と指摘。目的、態様、継続時間などを考慮すると体罰にあたらず、違法ではないと判断した。

 判決によると、生徒は小2だった02年、休み時間中に廊下で友達と一緒に通りかかった女児をけり、さらに、注意した講師の尻をけった。講師は追いかけて捕まえ、洋服をつかんで壁に押しつけ、「もう、すんなよ」としかった。生徒は講師から怒られた後に食欲が低下するなどして通学できず、03年2月に病院で心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。その後、回復して元気に学校に通うようになったが、生徒の母親は学校側の説明に納得せず、学校や市教育委員会に極めて激しく抗議を続けた。

 生徒は05年に提訴。約350万円の賠償請求に対し、一審・熊本地裁は市に65万円の賠償を命じた。二審・福岡高裁はPTSDとの診断結果を否定したものの、講師の行為が体罰に当たるとして約21万円の支払いを命じたため、市が「教育的指導の範囲内だ」として上告していた。(中井大助)

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