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【消えた巨額貸付金】朝鮮総連の錬金術(下)1億円踏み倒し

4月23日7時59分配信 産経新聞


【消えた巨額貸付金】朝鮮総連の錬金術(下)1億円踏み倒し

訴訟に証拠提出された朝銀京都信組理事長(当時)の書簡。朝鮮総連が各地の朝銀を動員して商工人らから60億以上を調達したと指摘している(写真:産経新聞)

 ■幹部ら「証書は偽造」

 「分かっている。できるだけ早く返す」

 「預置金証」という借入証書を使い在日商工人らから1人1億円の借り入れを秘密裏に行った在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の実務責任者だった当時の副議長、許宗萬(ホ・ジョンマン)は、返済の督促に対して、こう答えたという。

  [イラストでチェック]朝鮮総連の預置金証と借入金の流れ

 だが、返済訴訟で朝鮮総連側の敗訴が確定してから約1年半がたった今もその言葉は実行されていない。

 京都市在住の詩人で建設会社経営の宋在星(ソン・ジェソン)は、平成元年12月、在日朝鮮人系信用組合「朝銀京都」の理事長(当時)を通じて朝鮮総連に1億円を貸した。バブル経済崩壊の影響もあり会社の資金繰りなど財政的に厳しかったが、借りた側から連絡をしてくるのが筋と考え、当初は平成7年12月の返済期限を過ぎても催促せずにいた。

 「返済期限はとっくに過ぎたが、どうなっているのか」。8年に入り、何のおとさたもなかったことが気にかかり、宋在星は仲介役となった朝銀京都の理事長にただした。

 「総連中央本部も分かっているから、少し待ってやってほしい」。旧知の理事長のこの言葉を信じ、もう少し待つことにした。

 理事長側も、返済期限が過ぎていたことが気になり始めていた。8年秋。全国朝銀の上部機関である「在日本朝鮮信用組合協会」(朝信協、既に解散)の副会長に就任していた理事長は、朝信協会長と許宗萬との会食に同席。席上、返済の督促に許宗萬は冒頭の「できるだけ早く」と回答するにとどまったという。

 そうこうしているうちに全国の朝銀の経営が悪化し始め、統廃合のラッシュが始まった。朝銀京都は周辺の兵庫、滋賀、和歌山、奈良と合併。京都の理事長は新たに発足した「朝銀近畿」の理事長に就任。この近畿も結局、12年に破綻(はたん)した。

 翌13年には、朝銀大阪から朝鮮総連中央本部への上納金のために発生した10億円の不良債権の不正処理に関与したとして、理事長自身が逮捕、起訴されてしまう。理事長の身辺が落ち着きを取り戻した15年、宋在星は借金の督促を本格化させることにした。

                ×    ×

 「この件については許宗萬副議長が担当するので、その指示に従うこと」

 この指令の下に始まった「預置金証」による借入作業。借金返済の督促を16年4月に再開した理事長は実務責任者である許宗萬に督促書と謝罪を求める親書を送った。だが、反応はなかった。翌月、再び督促書を送付。それでもなしのつぶて。1億円を貸した宋在星も話し合いの要請書を3回送ったが、対応がないまま6カ月が過ぎた。

 許宗萬の対応に失望した宋在星は、同じように1億円を貸した商工人と2人で訴訟に踏み切った。

 その裁判で、宋在星らは朝鮮総連側の主張に耳を疑った。

 「『預置金証』は偽造であり、存在せず、原告側との貸借関係もない」

 在日同胞の人権を擁護するための組織の最高幹部らが、1億円もの借金を堂々と踏み倒そうとしたのだ。

 法廷の“場外”では、力でねじふせようともしていた。京都地裁での第1回口頭弁論が開かれる直前の16年12月、朝鮮総連財政局の副局長(当時)が突然、京都を訪ねた。副局長は借り入れを行った元年当時の朝銀京都の融資部長を京都市内のホテルに呼び出し、「借入名義別明細」という文書の「6億円」と書かれた部分を示しながらこうまくしたてたという。

 「1億円を貸した証拠はないだろう」

 原告側が真性の「預置金証」を持っているのに、だ。副局長の発言は続く。総連側が「秘密裏に」と命じたことで貸し出しを行った商工人らが偽名を使って金を送金していたことを逆手に取り、「(朝銀京都による)名義借りではないか」とまで言ったという。

 さらに、「(差し押さえ債権として)RCCに行ったので、原告側に請求権はないのではないか」。暗に1億円の借り入れを認めた発言だった。

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 18年3月9日、京都地裁に証人出廷した理事長はこの朝鮮総連側の「不可解な行動」(理事長陳述書)についてこう述べた。

 「被告側は本件に関し何も知らないと主張していますが、被告が本当に何も知らないのであれば、このようなことをする必要もなく聞く必要もないと思いますので、矛盾があるということです」

 訴訟は19年9月、朝鮮総連側の上告を最高裁が退け、宋在星らの全面勝訴で確定した。

 宋在星は指弾する。

 「謝罪も面会も拒み続ける許宗萬責任副議長は同胞の人権擁護団体の要職に不適格だ。責任ある者として、辞職で範を示してもらいたい」

 公安当局は「預置金証」による朝鮮総連の借り入れやその後の訴訟、判決後の対応を注視している。(呼称、敬称略)

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最終更新:4月23日7時59分

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