ゲームソフト会社のコナミデジタルエンタテインメント(コナミ)が、04年11月にイラクのファルージャで一般市民など2千人以上の犠牲者を出した米軍の戦闘を疑似体験できるコンピューターゲームの商品化を検討していたことがわかった。今月初め、同社の米現地法人が来年以降の製品として発表したが、米国などで批判が続出。同社は「扱わないことを決めた」という。
ゲームは「Six Days in Fallujah(ファルージャの6日間)」。米国のゲーム会社アトミック・ゲームズ社がソフトを開発し、コナミが商品化の権利取得を検討。4月上旬に米国で行われたゲーム業界専門誌対象のイベントで、このゲームを来年以降のラインアップとして紹介した。
米国のゲーム雑誌などによると、ファルージャで実際に起きた戦闘の様子をコンピューター・グラフィックス(CG)画像で詳細に再現。プレーヤーは市街に展開した米海兵隊員となって「敵」を攻撃する。武器を持たない丸腰の人間を撃つかどうか、判断を迫られる場面もあるという。
ウォールストリート・ジャーナル紙のゲーム専門記者ブロフィーウォーレン氏によると、制作には実際にファルージャの戦闘に参加した兵士約40人が協力。日々の作戦行動を記した日記なども提供し、戦闘の正確な時間や部隊の位置など、現実に極めて近い形で再現したという。同氏は協力した海兵隊員とアトミック社への取材から、「軍の機密扱いの衛星画像を含む数千枚に及ぶ写真も使用された」としている。
米国での発表後、欧米を中心に兵士の遺族や退役軍人、市民団体などから批判が相次いだ。
これを受け、コナミ広報室は「米国での反応や、電話やメールで寄せられた意見を見て、数日前、取り扱わないことを決めた。戦闘の事実を伝え、現場にいるのがどういうことかを感じてほしいという意図だった。まだ販売の検討段階にはなかった」と説明。制作の経緯については「彼ら(アトミック社)なりのネットワークがあったのだろうが、(米軍との)ルートは分からない」と話している。
04年11月のファルージャでの市街戦は、イラク戦争後に起きた戦闘の中で最大規模だった。数週間で多数の市民を含む2千人以上が殺害された。(宮地ゆう)