イスラマバード(CNN) パキスタンで勢力を拡大しているイスラム原理主義勢力タリバーンが、ラジオ放送や布教活動を通じて「自分たちは貧しい庶民を支配層から守るイスラム教のロビン・フッド」だと訴えている。深刻な貧困を抱え、保守傾向の強い農村部では、その教えが徐々に浸透しつつある。
首都イスラマバードから約25キロほど離れた農業地帯で15歳の息子とともに草を刈っていた男性は、水牛を4頭飼い、そのミルクを売って暮らしを立てている。7人家族を養うための毎月の稼ぎは5000円程度。2カ月前、住みついていた家を政府によって破壊された。恐らく不法占拠が理由だろうという。
「(パキスタンの)正義とは金持ちだけのためにある。私たちは読み書きはできないが、シャリア(イスラム法)で生活が良くなることを願っている」とこの男性は話した。
タリバーンはシャリアを根拠に土地占領を正当化するやり方で、北西部ブネル地区も制圧した。隣接するスワート地区を拠点とするタリバーン勢力の広報担当者はCNNの取材に対し、「パキスタン政府は反イスラム的」だと批判、「シャリアの下では富裕層も貧困層も平等に扱わなければならない」と指摘した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、タリバーンはまず評判の悪い地主や官僚に狙いを定め、地元の人たちの怒りをかき立て、時にはロビン・フッドよろしく悪人を厳しく裁いてみせる。「それで最初は歓迎されることさえある」という。
パシュトゥン人のある農民は、「私たちはタリバーンが大好きだ。タリバーンはヒーローだ」と公言してはばからない。
しかしタリバーンの正義とは、女性から自動車の運転免許を取り上げるなど、自由を奪うことでもある。「女性は家から出てもいけない。それはイスラム法に反する」と別の男性は言い、イスラマバードの女性の服装は反イスラム的だと不満を漏らした。
ブネル地区に進出したタリバーンは女性の外出禁止を命じ、男性にはひげをそることを禁じて、音楽や映画を売る店を脅して回っている。