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【放送芸能】TBSラジオ『ゆうゆうワイド』28日に6000回 大沢悠里 顔見えなくても心は伝わる2009年4月26日 朝刊 TBSラジオの生ワイド番組「大沢悠里のゆうゆうワイド」(月−金曜午前8時半)が二十八日に六千回を迎える。毎日変わるゲストから“いい話”を聞き出し、優しく丁寧に、週に一度はちょっぴりエッチに、ラジオの前の人たちに語りかけるパーソナリティーの大沢悠里(68)。中高年を中心に多くのリスナーに愛される彼に、番組やラジオへの思いを聞いた。 (宮崎美紀子) 「気配りかなって感じるんですね、番組作りって。仕事しながらの人もいるし、病気している人もいる。聴いている方がいつも見えていないといけないんです。マイクの前に人がいるような気分でしゃべっているんですよ」 冒頭では「病気療養中の方もお聞きください」と語りかける。一九九四年、軽い脳梗塞(こうそく)で入院した。病院ではたくさんの人が番組を聴いていた。「悠里さんに励まされてます」という言葉がうれしかった。「放送って元気な人だけを相手にやっているけど、そうじゃない人もいる。番組に帰ってきてしばらくしたころ、つい口をついて出てしまった言葉なんです」 毎朝六時にスタジオに入り、四時間半の生放送。終われば翌日のゲストの資料を調べる。芝居や映画、コンサートにも行き、夜はお酒を楽しむ。ただし仕事関係者とは飲まない。「スタッフと飲むと愚痴や悪口になる。そんなの会議で言えって。関係ない人たちと飲むから話が広がる」 ゲストから、さりげなく、いい話を引き出すインタビューも番組の魅力の一つ。夢の中に出てくるほど情報を頭にたたき込むが「玄関」ではなく「縁側」から入るように、何げないことからすっと懐に入るのだという。 金曜九時の名物「お色気大賞」では雰囲気がガラリと変わる。エッチな投稿を、声音を変え、方言やアドリブを交えて、話芸に昇華させる技は見事としか言いようがない。 「例えば標準語で『奥さん、毛深いですね』だと、どうにもならない。『いんやあ、毛深いなあ、こりゃまた。ネコが寝てんのかと思ったあ』だと笑えるでしょ」と、さらっと実演。本番ではパートナー・さこみちよの絶妙なツッコミが入る。「彼女がいないと、このコーナーはできません」 TBSの局員時代からフリーの今まで、約四十五年のほとんどをラジオで生きてきた。テレビのナレーションは好きだが顔を出すのは大嫌い。顔を知られると街を歩いたり電車に乗れなくなるからだ。 「電車に乗ると目の前で私の話をする人がいますよ。この前、劇場で『私、金曜日は聴かないのよ、スケベで』って言う人がいて、それを笑って聞くんです。透明人間みたいで面白いじゃないですか。これがラジオです。パーソナリティーがハイヤーに乗るようになったらダメです」 「ラジオが好き。仕事だけど楽しい」−。だから六千回も続いたのだろうが、その六千回も、上ってきた石段の段数を数えるようなもので、誇る気も騒ぐ気もない。当日は浅草で公開生放送だが、「楽しくなればいいけど、どうするかは当日考えます」と普段通り。 ファンにとっては想像したくない辞め時は、自分自身で考えている。セコンドがタオルを投げる前に自分で投げたいという。「生放送中にパタってのもいいね」なんて際どい冗談も飛び出した。 「もう作っとこ、いつでも流せるように。『大沢悠里です。今日でお別れです。私の好きなベートーベンの田園をお聞きください。私はあの世に旅立ちます。長い間、ありがとう』。いいですね、これ」。まじめさと軽さ。温かくてニヒル。彼のさまざまな顔が見えないラジオを通じてリスナーの心に届いている。 <ゆうゆうワイド> 1986年4月7日スタート。TBSの生ワイドでは最長寿番組。現在のパートナーは、西村知江子(月)、佐田玲子(火)、五月みどり(水)、陣内貴美子(木)、さこみちよ(金)。さことは以前の番組からの30年を超えるコンビ。 「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」「小沢昭一の小沢昭一的こころ」「永六輔の誰かとどこかで」などコーナー、ミニ番組にも長寿ものが多い。「かわいそうなぞう」の朗読で知られる「秋山ちえ子の談話室」は2002年まで同番組内で放送されていた。
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