【ニューヨーク=松浦肇】日本銀行の白川方明総裁はニューヨーク市内で23日講演し、世界経済の現状について「危機が世界規模で発生しており、他国(の経済回復)には期待できない」と述べ、予断を許さないとの厳しい認識を表明した。そのうえで潤沢な資金供給や金融機関への公的資金の投入、包括的な景気刺激策の発動が必要と訴えた。
白川総裁は1990年代に日本経済が経験した「失われた10年」と現在の米国経済との類似性を指摘。「納税者の資金が必要だとの(一定の)合意ができても、金融機関の経営失敗に対する国民の怒りを受け、政策出動は断片的になりやすい」と語り、公的資金を円滑に投入することの難しさに言及した。米国で公的資金の追加投入に異論が噴出していることを踏まえた発言だ。
一方で世界の金融システムは「現在も信用の喪失による打撃を受けている」と強調。米景気についても一部の経済指標の持ち直しをもとに「回復基調に入ったとみるのは時期尚早」と慎重な見方を明らかにした。(11:46)