2009年4月25日21時11分
【イスラマバード=山本大輔】アフガニスタン国境に近いパキスタン北西部を拠点とする反政府武装勢力タリバーンが、首都から約100キロの地点まで兵を進めるなど攻勢を強めている。両国を対テロの「主戦場」として重視する米政府は、「国際社会にとって致命的な脅威」と危機感を隠せない。
情報筋によると、タリバーンは5日から首都イスラマバードの北方約100キロにあるブネールへの侵入を始め、地元政府やNGO、教育施設などを襲撃し、政府関係者らを追放。モスクも占拠した。
ロケットランチャーなどで武装した兵の数は23日までに数百人に達し、前線基地3カ所を設置して対空機関銃車両なども運び込んだ。検問所も設けられ、地元テレビは武装兵が「イスラム法に反した活動が多すぎる」と叫びながら巡回する姿を流した。
ブネールが属する北西辺境州マラカンド地域では、ザルダリ大統領が13日、イスラム法を唯一の法制度とするというタリバーンの要求を、停戦と引き換えに受け入れたばかり。タリバーンは同地域のスワートに前線拠点を設け、北西辺境州の一部を事実上支配している。
タリバーン広報官はAP通信に「(国際テロ組織)アルカイダのビンラディンが望むなら、スワート入りを歓迎する」と答え、支配体制に自信を見せた。
当局筋の話では、現時点では地元警察や軍は待機を命じられ、戦闘は起きていない。政府筋は朝日新聞の取材に「勢力地域はすべて山岳地帯。平地の首都にまで侵攻する力はないと思うが、自爆テロや誘拐などが増える懸念はある」と話した。
米政府は危機感を強めている。クリントン国務長官は22日、米下院外交委員会の公聴会で「政策を誤ればパキスタンがテロリストの手に落ちる危険性がある」と指摘。「米国と国際社会の安全と安心にとって、致命的と言える脅威だ」と述べた。