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虚偽証言報道 あまりに大きい誤報の代償2009年3月19日

 日本テレビが報道番組で虚偽証言を基に、岐阜県が裏金づくりをしていると報じた問題で、久保伸太郎社長が「誤報であり、重大な監督指導不行き届き」として、引責辞任した。
 岐阜県内の元土木建設会社役員が昨年11月、番組に出演し「岐阜県の土木事務所では今も裏金づくりをしている」「県の担当者から裏金を捻出(ねんしゅつ)して振り込むよう言われた」と証言した。これが虚偽だったのである。
 証言の裏付け取材を十分尽くせば、誤報は防げたはずである。だが、久保社長は「裏付けだけでなく、取材活動全体に問題があった」と説明している。その一方で、捏造(ねつぞう)や証言者への金銭など謝礼の支払いは否定した。
 同社が実施する内部調査で「取材活動全体」の問題点を早急に明らかにしてほしい。
 視聴者の信頼を損ねただけでなく、岐阜県などに与えた影響を考えると、誤報の代償はあまりにも大きい。
 岐阜県では2006年、1992年度からの12年間で約17億円の裏金問題が発覚、職員4000人以上が処分された。県民の信頼回復に努めるさなかに「今も裏金づくりをしている」との誤報で、同県が受けた痛手は計り知れない。
 同県は事実調査の結果、裏金づくりの事実はなかったと断定、証言者も虚偽だったと認めている。取材が中途半端だったとしか言いようがない。
 証言者はうその証言で岐阜県の業務を妨げたとして業務妨害の疑いで逮捕された。悪意のある“告発者”とはいえ、取材を徹底すれば、この件で逮捕者を出すことはなかっただろう。
 2回開いた辞任会見の在り方にも疑問がある。最初の会見は「冷静な環境で記者に説明したい」としてカメラ取材を許可せず、取材者も1社1人に限定するなどし、報道陣の抗議であらためて会見を開いた。
 同社は普段、報道する立場であることや事の重大さを考えれば、最初から取材を制限するべきではなかった。
 同社の「取材・放送規範」は「取材・放送は、国民の知る権利に奉仕し、真実を追求しなければならない」と規定している。多くの記者はそれに沿って取材しているだろう。「真実の追求」という報道の原点を全社員で共有することでしか、信頼は回復できない。


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