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定額給付金:DV夫への支給やめて 横浜地裁に申し立てへ

 世帯主に家族全員分が原則一括支給される定額給付金を巡り、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者で夫と別居している女性2人が「給付金を受け取れないのは不当」として、住民票を残している横浜・川崎両市に対し夫への一括支給差し止めを求める仮処分を近く横浜地裁に申し立てる。申し立て代理人の佐賀悦子弁護士によると、少なくとも首都圏の十数人が同様の相談を弁護士にしており、申し立てが続く見通しだ。

 佐賀弁護士によると横浜市に住民票のある女性は2人の子どもとともに別居し離婚訴訟中で、給付金は母子3人で5万2000円になる。川崎市の女性は妊娠中に被害に遭い別居後に女児を出産、母子2人で3万2000円を受け取れる計算になる。

 総務省が定めた給付金の支給要綱によると、給付金は2月1日時点の住民登録に基づき世帯ごとに世帯主に支給される。女性らのように危険を避けるため住民票を移さず別居している場合、世帯主の夫が申請すると同居していない家族の分も含めて一家全員分を受け取ることになる。要綱に従う限りは、DV被害者であっても給付金を受け取るには、住民票を別居先に移す必要がある。

 佐賀弁護士は「DV被害者が引っ越し先で住民登録をするのは心理的に不可能に近く、重いDVの場合は同一市内に住むことさえできない」と話す。

 仮処分申請について横浜市市民活力推進局区連絡調整課の担当者は「内容が分からない」と話した。こうしたケースの救済策として給付金を受け取った一般市民から寄付を募り、DV被害者へ再分配する方法を検討しているという。また川崎市経済労働局企画課の担当者は「DV被害者への対応は課題とは認識しているが、現段階では国の方針に従って世帯主に給付するしかない」と話した。

 横浜弁護士会は3月、女性らのようなDV被害者や離婚問題で別居中の人について「本人が給付金を受け取れない恐れがある」として、神奈川県や県内市町村に本人への直接支給を求める提言書を出した。しかし国の要綱と異なる対応に難色を示す市町村が多かったという。【杉埜水脈、木村健二】

毎日新聞 2009年4月20日 11時56分(最終更新 4月20日 12時17分)

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