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【国際】

差別撤廃会議大荒れ イラン大統領 イスラエルを強く非難

2009年4月21日 朝刊

 【ベルリン=弓削雅人】国連主導の世界人種差別撤廃再検討会議が二十日、ジュネーブで開幕した。反イスラエルをアピールする場としたいイスラム諸国に対し、警戒する米欧諸国の不参加が続出する中で、イランのアハマディネジャド大統領が演説でイスラエルを激しく非難。反発する欧州諸国代表が議場を退出するなど、波乱の幕開けとなった。

 ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)否定発言などで反イスラエルの立場を鮮明にしている同大統領は、パレスチナ問題を引き合いに「最も残虐で人種差別を行う体制」だとイスラエルを批判。欧州連合(EU)代表らが続々と退席する会場には、一時、抗議の活動家が乱入するなど騒然とした。その一方、発言を歓迎する国の代表団からは拍手が起きた。

 会議の焦点の一つとなる人種と宗教の分野で、イスラエルの体制を「人種差別」と唱えるイスラム諸国の主張が反映される可能性が強まり、イスラエルは開幕前から猛反発。各国にボイコットを呼びかけ、二十日にはイラン大統領を会議に招待したホスト国のスイスに抗議して駐スイス大使を近日中に召還する方針を決定した。

 人権擁護に積極的な新政権の誕生で懸案解決への努力が注目された米国は、オバマ大統領が「イスラエルへの敵意表明は、偽善的。生産的な会議にはならない」と強調して不参加を表明。オーストラリア、カナダ、イタリア、ニュージーランド、ドイツなど計九カ国が参加していない。フランスもオブザーバー参加にとどめるなど奴隷制度や人権問題まで幅広い議題を扱う会議の空洞化が不可避になってきた。日本は参加している。国連の潘基文(バンキムン)事務総長は「参加国が少なく会議の効力が弱まり、失望した」などとコメントした。

 今回の会議は二〇〇一年に百七十カ国が参加して南アフリカ・ダーバンでの協議で採択された、奴隷制度非難や差別撤廃への取り組みをまとめた宣言と行動計画の成果を検証、今後の課題を話し合うのが目的。二十四日までの会期で今後の取り組みなどを「成果文書」としてまとめる。

 

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