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臨床研修制度:初年度は定員維持 厚労省見直し案、偏在温存も

 医師不足を招いた一因との批判を受けた新人医師の臨床研修制度について、厚生労働省の医道審議会部会は23日、来年度採用の研修医から適用される見直し案を了承した。働き手になってもらえるよう、研修期間(2年)の実質1年への短縮も可能にすることなどが柱。新たに設ける都道府県別の募集定員の上限については、大都市部での急激な研修医減少を緩和するため、初年度は前年の採用実績を下回らないよう経過措置を取ることにした。今月中に省令を改正し、10月ごろ新人医師の研修先が決まる。

 これまでの臨床研修制度では、研修医の人気が大都市の市中病院に集まり、地方の大学病院の医師不足につながっていた。

 定員の上限は基本的に、都道府県の人口などに応じて決め、医師の少ない県には加算する。現段階の厚労省の試算によると、東京や大阪など5都府県で08年度の採用実績を下回ることになる。さらに年間入院患者3000人未満の施設は研修病院として認めない方針で、地方の大学病院への研修医回帰を狙う。

 だが、都道府県枠については「医師の就業規制に当たる」「地域医療に影響を与える」などの反発も強い。このため、初年度は、どの病院も前年の採用実績以上の募集を認めることにした。研修病院の指定取り消しも、一定期間内は行わない。

 2年目以降も、大都市部の前年比の減少幅が過大にならないよう配慮する。この結果、卒業生数(約8000人)より総募集定員が1割以上多い状態が続き、地方に研修医が流れず、偏在の是正にならない恐れもある。

 研修内容については、2年間で経験しなければならない診療科を7から5に減らして、実質的な研修期間の1年短縮も可能にした。研修医を20人以上受け入れる病院には、医師不足が著しい小児科医と産科医を育てるプログラムの策定を義務付けた。【清水健二】

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■研修医募集定員の上限の厚労省試算

    08年度採用実績 10年度定員上限  実績との差

北海道      313      410      97

青森        63      130      67

岩手        66      119      53

宮城       115      144      29

秋田        63      125      62

山形        60      131      71

福島        76      151      75

茨城       119      180      61

栃木       126      201      75

群馬        80      122      42

埼玉       214      429     215

千葉       283      369      86

東京      1338     1289   ▼  49

神奈川      584      538   ▼  46

新潟        70      182     112

富山        54      105      51

石川        86      200     114

福井        49      109      60

山梨        51      119      68

長野       106      146      40

岐阜        95      140      45

静岡       160      231      71

愛知       446      448       2

三重        75      128      53

滋賀        85       99      14

京都       274      247   ▼  27

大阪       613      552   ▼  61

兵庫       319      341      22

奈良        78       95      17

和歌山       74       95      21

鳥取        30       90      60

島根        37      130      93

岡山       150      201      51

広島       142      180      38

山口        57      107      50

徳島        49      106      57

香川        64       99      35

愛媛        68      111      43

高知        38      106      68

福岡       434      391   ▼  43

佐賀        58       92      34

長崎        68      148      80

熊本        98      113      15

大分        54      108      54

宮崎        45      106      61

鹿児島       68      172     104

沖縄       140      144       4

 計      7735     9979    2244

 ▼はマイナス。マイナスの都府県については激変緩和措置がとられるため、実際にマイナスになるのは11年度からの見通し。

毎日新聞 2009年4月24日 東京朝刊

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