インドネシアから2008年夏に来日した看護師たちの今を追いました。
インドネシアから2008年夏に来日した看護師たちが、研修を終えて病院に着任してから2カ月、ニュースジャパンでこれまでに紹介した2人も、すでに医療の最前線にいます。
2人の看護師の今を追いました。
看護師候補1期生の1人、ピピット・サビトリさんは、経済連携協定に基づきインドネシアから来日した。
ピピットさんは「お昼ご飯ですよ。おいしそうよ」、「お野菜ですね、おいしい、おいしいですか?」と、お年寄りの患者に優しく声をかけながら、食事の世話をしていた。
2009年2月、半年間の日本語研修を終えたピピットさんは、翌日、仲間のルシィ・フィトリアニさんと、神奈川県内の病院に着任した。
鶴巻温泉病院の藤田力也院長は「辞令、3階南病棟メディカルアシスタント、ピピット・サビトリさん」と、辞令を交付した。
着任から2カ月、病棟には、看護助手として懸命に働く2人の姿があった。
ピピットさんの配属先は、内科のリハビリ病棟だった。
ピピットさんは「おいなりさんも食べて」、「元気になりましょう、お野菜も食べて」と話しながら、少しでも食べやすいようにと、ご飯をスプーンに取って手渡していた。
ピピットさんは、一口食べ終わるごとに話しかけ、ペースを確認しながら介助していた。
患者の女性は「(ピピットさんはどう?)親切な人」、「(外国から来てがんばっているが?)偉いと思う」と話した。
一方、ルシィさんは、神経内科に配属された。
ルシィさんが「きょうは、いい天気ですよ。気持ちどうですか?」と話しかけると、患者は「気持ちいい」と答えていた。
重い病気の患者が多いだけに、看護助手の責任も大きい。
ルシィさんは「この患者さんは、どんなことに注意しなければならないとか、どんな病気とか。だんだん慣れてきました」と話した。
献身的に働く2人だが、前途には大きな壁がある。
それは、日本の看護師国家試験で、母国でピピットさんは13年、ルシィさんは3年の看護師経験を持つが、3年以内に日本語で国家試験に合格しないと、帰国しなければならない。
2日後に行われる看護師国家試験に向けて、2人は先輩看護師と猛勉強を行っていた。
2人は、専門用語が並ぶ問題に、平仮名そして英語で振り仮名を振る。
国家試験の出題数は全300問で、1問1〜2分で回答していかなければ、合格には結びつかない。
ルシィさんは「ゼンモウ? センモウ、線毛上皮細胞」、「看護師国家試験じゃなくて、漢字の試験です」と話した。
そして試験当日、ピピットさんとルシィさんは、緊張した表情で試験会場入りした。
試験を終えた2人は「国家試験が大変難しいと思います。あの、漢字が」と話した。
結局、2人が正解できたのは、300問中50問程度で、合格には遠く及ばなかった。
高い国家試験の壁には、病院側も改善が必要と指摘する。
鶴巻温泉病院の小副川 英男事務長は「漢字なんかを使った試験ですから難しいと。今の体制の試験を続けて、3年間いいのかなという気は、ちょっとしております」と話した。
ピピットさんとルシィさんは、病院の近くにある寮で暮らしている。
ルシィさんの部屋の壁には、遠く離れて暮らす家族の写真、もう一方の壁には、人体の骨格図が張られていた。
ルシィさんは「これは英語も書いてあるし、漢字もあるし。でも、なかなか覚えられない」、「本当は、看護師さんの仕事をやりたい。まだ、あと2回チャレンジがある。でも、(合格できるか)わからない」と話した。
残された受験チャンスはあと2回、手探りの挑戦が続く。
(04/24 00:38)