県立奈良病院(奈良市平松)の産婦人科医2人が、夜間や土曜休日の宿日直勤務に対し、割増賃金などの支払いを求めた民事訴訟。奈良地裁の判決は、原告の主張を一部認め、県に厳しい内容となった。判決を受けて、記者会見した武末文男・健康安全局長は「日本の医療のあり方に一石を投じた。判決を重く受け止めます」と述べ、今後、待遇改善に取り組む意向を示した。
武末局長は「控訴については今後検討したい」と述べたが、「労務管理や勤務状況を把握しなければなかったという点では問題があった」と、不備があったことを認めた。
一方、これまでの県の取り組みに触れ、宿直勤務や分べん、時間外呼び出しなどへの特殊勤務手当の支給▽同病院産科の産科医や後期臨床研修医3人の増員▽医師の業務負担を軽減する事務員「メディカルクラーク」の導入--などを進めてきたことを強調した。
原告側は、異常分べんなどに備えて自宅で待機する「宅直」も労働時間に含めるよう主張したが、判決は「病院の指揮命令下にあったとは認められない」として請求を退けた。
宅直について、武末局長は「根本的には2人当直にできない医師不足がある。また、自分が主治医をしている患者の具合が悪くなったら、どんな場所に居ても呼び出される慣習があった」と指摘。「今後は当直勤務の翌日は休みが取れるような勤務態勢の導入を検討したい」と述べた。
原告側の藤本卓司弁護士は「宿日直勤務の始めから終わりまでが労働時間だと明示した画期的な判決だ。全国の多くの病院も同じような実態で、国や行政が産科医不足の対策を取ることが求められる」と述べた。【阿部亮介、高瀬浩平】
毎日新聞 2009年4月23日 地方版