「完全個室」病院開校のインパクト
「完全個室」病院開校のインパクト 04/23 19:31

来週、福岡市に新しい病院が開院します。

場所はRKBの目の前なんですが、全ての部屋が個室という九州ではこれまでにないタイプの病院です。

完全個室の豪華病院の登場は、地域医療のあり方そのものにも影響を与えそうです。

3階部分まで吹き抜けのロビー。

中央にはグランドピアノが設置され、さながらリゾートホテルのロビーのようですが、ここは、福岡市に来月開院する総合病院の待合室です。

床は、病院では珍しいカーペット。

医師や看護師の足音がしないようにという配慮です。

そして最大の特徴は、199床すべての部屋が個室という点です。

こちらのベッド。


酸素や点滴を取り付ける医療設備は、普段は見えないように設計されています。

お風呂やシャワー、トイレは全室に完備。

ミニキッチンではお茶の用意もできます。

さらに見舞いに訪れる家族や友人を想定しての応接室もあります。

窓から見えるのはすばらしい景色。

病院にいることを忘れさせてくれる空間です。

金出病院長は、九大の元医学部長を経て、定年退職後、新病院の立ち上げに関わりました。

これまでの経験を踏まえて、「これからの時代は、患者のニーズに合った設備が必要だ」と話します。

一方、入院する際は、大部屋ではないため、差額ベッド代といわれる個室料金が必要です。

料金は、部屋の広さに応じて1日8000円から4万円で、診療費とは別に患者が負担することになります。

常駐する医師はおよそ60人。

ここでは、人間ドックに代表される予防医学やリハビリ、婦人科系の疾患の治療などに特に力を入れる予定ですが、実は、この病院が開院することで、大きな影響を受ける病院があります。

福岡市の中心部にある、浜の町病院は、高度な技術が必要な腹腔鏡手術に優れ、子宮筋腫などの治療で、全国トップレベルの手術を年間およそ800件こなしてきました。

この手術を担ってきた5人の産婦人科医が、福岡山王病院に移籍することになったのです。

医師の確保はどの病院にとっても深刻な問題。

浜の町病院の関係者は、「地域医療が崩壊し、影響は甚大だ」と話します。

今後、ハイレベルの腹腔鏡手術を受けるには、福岡山王病院に入院しなければなりません。

差額ベッド代が出せず、この手術をあきらめる患者が出ることが懸念されます。

こちらは、同じグループが経営する東京の山王病院です。

75の病室は当然「全室個室」。

差額ベッド代は1日3万2,000円から13万6,000円で、福岡より3倍程度割高に設定されています。

ここで出産するには、90万円から130万円の費用がかかりますが、常に9割のベッドが埋まってる状態です。

施設だけでなく、食事のメニューも充実していて、好みに応じて選択できることも好評です。

東京では、料金を支払っても快適な空間とより良いサービスを求める患者は少なくありません。

福岡の病院では、出産費用は60万円から80万円程度と、確かに東京よりは割安ですが、決して安い金額ではありません。

患者の経済力に応じて、受けられる医療サービスも変わる、そんな時代に入ろうとしています。

よりよい環境で診療してもらえるなら、いくらお金を払ってもいいという人は確かにいるでしょう。

しかし、差額ベッド代が払えない人はどこの病院へ行ってもよりよい治療が受けられない、というのは困ります。

私たちの社会にはどういう医療のあり方が求められるのか、みんなで考える必要があります。