2009年4月22日0時19分
スリランカで20日、反政府武装勢力の支配地域から脱出して政府の支配地域に到着した市民ら。スリランカ政府軍が21日に公開した=AP
スリランカ地図
【ニューデリー=武石英史郎】スリランカ政府軍は21日、反政府武装勢力「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が市民多数を「人間の盾」にして立てこもる「非戦闘地域」への進入を始めた。国防省当局者によると、同地域から約5万人が脱出したが、なお残されている市民の数については不明という。市民を「人質」にしたまま戦闘が本格化することに、国連や人権団体は懸念を強めている。
国防省によると、LTTEが築いていた防衛線を突破した政府軍は、内陸側から非戦闘地域に入り、同地域を南北に分断して海岸へ達した。一方、LTTEは政府軍が設定した同日正午(日本時間同日午後3時半)の投降期限を過ぎても、応じる気配を見せていない。
無人偵察機による空撮情報などをもとに政府軍高官は20日夜の時点で「少数の市民しか残っていない」との見方を示していた。しかし、脱出者は21日に入って倍近くに膨れ上がっており、国防省当局者は「実際何人の市民が残っているのか、把握することは不可能だ」と認めた。
LTTEの戦闘員は、拘束された際に自殺するための薬を常備し、自爆もいとわない「決死隊」として知られる。本拠地キリノッチや軍事拠点ムライティブを含む支配地の大半を失い、戦力を大幅に減らしたLTTEが「人間の盾」を唯一の防御手段にして絶望的な抵抗を続ければ、市民多数を巻き添えにすることは避けられないとみられる。
政府軍は、脱出を試みる市民の列に向かってLTTEが銃撃したという脱出者の証言や、その場面を写したとする空撮映像を公表した。一方、LTTE寄りのウェブサイト「タミル・ネット」はLTTE当局者の声明文を掲載。「政府軍は市民を盾にして進軍し、地雷処理もやらせている。医薬品不足や飢餓が広がっている」として、政府軍の攻撃を止めるために国際社会の介入を求めている。