福山市の鞆港・埋め立て架橋計画について、アニメーション映画監督の宮崎駿さん(68)が東京都内で中国新聞社の取材に応じ、事業効果を「幻影ではないか」と懐疑的にみていることが分かった。最新作「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台が鞆を下敷きにしていることも初めて認め、架橋に替わる社会資本整備の方法があるとの見方も示した。
宮崎さんは鞆町の古民家に長期滞在したことをきっかけに「太平洋とまったく異なる内海の景色」を見てポニョを着想したと説明。鞆の山や丘から望んだ瀬戸内海の風景や、保育園などの施設を作品のモチーフにしたことを初めて自ら認めた。
宮崎さんの作品は、自然や環境と、開発のあり方を問い掛けるものが多い。架橋については「賛成派にも反対派にもくみしない」と前置きした上で、町の活性化などの事業効果を「幻影ではないか」と懐疑的にみていることを明らかにした。
また、「宝である人と人とのつながりの深さを大切にしていくことが重要」とし、架橋計画に替わる社会資本整備の手法があるはずだとした。(野崎建一郎)
▽みやざき・はやお 「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」などのアニメ作品がある映画監督。「千と千尋の神隠し」は、ベルリン国際映画祭金熊賞、米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞した。1941年東京都生まれ。
|