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【社会】

足利事件、受刑者DNA一致せず 再審開始の公算

2009年4月21日 09時43分

 栃木県足利市で1990年、保育園に通う女児=当時(4つ)=を殺害したとして、殺人罪などに問われ、無期懲役が確定した菅家(すがや)利和受刑者(62)が無罪を訴えている再審請求の即時抗告審で、東京高裁が嘱託したDNA型の再鑑定の結果、園児の着衣に付着した遺留物と菅家受刑者のDNA型が一致しなかったことが分かった。東京高裁が正式な鑑定書の提出を受け、再審の開始を決める可能性が出てきた。

 菅家受刑者の無期懲役が確定した2000年の最高裁決定はDNA鑑定の証拠価値を初めて認め、有罪の有力な決め手としていた。

 関係者によると、検察側、弁護側の推薦した鑑定人の鑑定結果が、いずれも遺留物と菅家受刑者のDNA型は不一致と出た。鑑定人からの報告書は月末にも東京高裁に提出される見通しという。

 再審請求をめぐっては、弁護側が菅家受刑者の毛髪を取り寄せ、最新技術で鑑定し、有罪の根拠となったDNA型と異なる結果を示した新証拠などを提出したが、宇都宮地裁で棄却され、東京高裁に即時抗告。高裁が昨年12月、再鑑定の実施を決めていた。

 菅家受刑者は任意の調べで当初、容疑を否認。DNA型の一致を取り調べで指摘された後、認める供述を始めた。一審公判の途中から無罪を主張したが、最高裁は2000年7月、「科学的に信頼できる方法で実施され、信用できる」とDNA鑑定を評価した。

 その上で「科学技術の発展で、新たに解明された事項なども加味して慎重に検討されるべきだが、このDNA鑑定を証拠として用いることが許される」として、一審の無期懲役を確定させた。弁護側は「当時はDNA鑑定の黎明(れいめい)期。格段に精度が高くなった現在の技術で再鑑定すべきだ」と主張していた。

 【足利園児誘拐殺人事件】 1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店に父親と来ていた保育園児が行方不明になり、近くの渡良瀬川河川敷で遺体が見つかった。県警は91年12月、DNA鑑定を根拠に菅家利和受刑者を逮捕。菅家受刑者は捜査段階で、犯行を認めたが、一審途中から無罪を主張した。物証が乏しく、公判では自白や鑑定の信用性が争点に。最高裁は2000年、一、二審に続いてDNA鑑定の証拠能力を認め、無期懲役が確定。弁護側は「受刑者とDNA型が一致しない」と再審請求したが、08年に宇都宮地裁で棄却され、東京高裁に即時抗告した。

(東京新聞)

 

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