解体が決まっているダイビル=大阪市北区、諫山卓弥撮影「大大阪」の店内に立つ中谷ノボルさん=大阪市北区、諫山卓弥撮影
「大大阪(だいおおさか)」。かつて大阪がそう呼ばれた時代があった。大正期に大阪市の人口は全国一となり、経済、文化の中心として花開いた。そのころ中之島に誕生したオフィスビル「ダイビル」が今秋にも解体される。「昔に負けない気概とまちへの愛着を」。そんな思いを店名に込め、解体までの期間限定でダイビル1階で営業していた喫茶店「大大阪」が、11日閉店する。
9日の昼下がり。アーチ型の彫刻のあるダイビル正面玄関をくぐると右手すぐに、12坪ほどの広さの「大阪名品喫茶 大大阪」がある。ビルの荘厳な雰囲気をそのままに、暖色の照明や黒と金色を基調としたレトロなインテリアが迎えてくれる。20席ほどの店内は老若男女の客足が絶えなかった。
「大大阪」が開店したのは4年前。ビル解体が決まり、次々とテナントが去っていく中、大阪市北区西天満で設計事務所を開いていた建築士の中谷ノボルさん(44)が事務所をダイビル内に移し、喫茶店を開いた。
中谷さんは阪神大震災後の住宅再建に携わったことをきっかけに、「新築ばかりを並べても町並みは育たない」と、長屋の再生などを手がけ始めた。近代建築に身を置いて利用者の立場からその良さを再確認しようと移転してきた。その際、ビルの歴史や風格を多くの人にゆっくり味わってもらおうと、以前に喫茶店があったスペースを改装して「大大阪」を開店した。
店内には、当時の大阪・中之島かいわいを撮ったセピア色の写真や約100冊の郷土史の書籍が壁にずらりと並ぶ。新しい大阪の姿も発信しようと、別の一角では地場製の文房具や若手芸術家の作品を展示・販売している。