（セ・リーグ、横浜４−２阪神、３回戦、阪神２勝１敗、１９日、横浜）阪神・鳥谷敬内野手（２７）が、八回に２号ソロ。右翼スタンド最前列のビールの売り子を直撃した一撃。幸い大事には至らなかったが、着実に成長を遂げる打棒が、借金１に後退したチームに新たな活力をもたらす。
【写真で見る】 打球が直撃し、倒れこむ女性。鳥谷は右翼方向を振り返る
弾丸と化したライナーが、横浜ファンで埋まった右翼席へ一直線に飛び込み、歓声と悲鳴が交錯した。３点を追う八回無死。鳥谷が、フルカウントから山口の速球をとらえた。反撃の２号ソロ。そして、思わぬアクシデントが起こった。
打球が、ちょうど右翼席最前列にいたビールの売り子の右ほおを、直撃したのだ。その場で、バタリと倒れ込む女性。横浜ファンも心配そうに駆け寄った。周囲には缶ビールが散乱し、飛び散った中には、グラウンドまで落ちるものもあった。右翼席が、凍りついた。
「全然わからなかったんですが、ベンチに戻ったら、人に当たったみたいだと言われました。心配ですね…。大事に至ってないことを、祈るしかないです」
鳥谷も、表情を曇らせた。打球については、打者はどうしようもないが、心配せずにはいられない。幸い、病院に向かった女性は、自分の足で帰宅するなど大事には至っていないもよう。それでも、凶器ともいえる硬球が顔に当たるのは、大変危険なことだ。
あわやのアクシデントとともに、結果的に“空砲”となった一発。悔しい敗戦で再び、借金は１。鳥谷は「勝ち越し（貯金し）て、というのがあったんで。勝てなかったことが悔しいです。切り替えていくしかないですね」と表情を引き締めた。ただ勝利には結びつかなかったとはいえ、３番の上昇気流は、チームの明るい兆しでもある。
一回に遊撃内野安打を放つと、四回無死一塁では思い切り引っ張る右前打で、同点のおぜん立て。そして八回に３試合ぶり２号。猛打賞も１０試合ぶり今季２度目だ。一時は２割そこそこに低迷した打率も、２戦連続マルチ安打で．２７８に上昇。真弓監督が「速い球に負けていなかった。誰かの調子が落ちてくれば、誰かが上がってこないとね」と巻き返しを期待すれば、和田打撃コーチも、「きのうからタイミングがとれるようになっているし、出るべくして結果が出た。これから上がっていくでしょう」と、状態に太鼓判を押した。
試合後、鳥谷らは２１日からの中日戦（ナゴヤＤ）に備えて移動。昨年、竜の本拠地で打率．３３３、４本塁打、１７打点と爆発した男は「勝つためにできることをやっていきたい」と気持ちを切り替えた。得意の球場でスタンドインのイメージが膨らむ。外野ファンも販売員も打球の行方に注意が必要！？ ３番として、より力強く、より頼もしく進化していく鳥谷。落合竜が、鋭いスイングの標的となる。
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