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【社会】

足利事件 DNA不一致 4歳女児殺害 再鑑定 再審の公算

2009年4月21日 朝刊

 栃木県足利市で一九九〇年、保育園児=当時(4つ)=を殺害したとして、殺人罪などに問われ、無期懲役が確定した菅家利和受刑者(62)が無罪を訴えている再審請求の即時抗告審で、東京高裁が嘱託したDNA型の再鑑定の結果、園児の着衣に付着した遺留物と菅家受刑者のDNA型が一致しなかったことが分かった。東京高裁が正式な鑑定書の提出を受け、再審の開始を決める可能性が出てきた。

 菅家受刑者の無期懲役が確定した二〇〇〇年の最高裁決定は、DNA型鑑定の証拠価値を初めて認め、有罪の有力な決め手としていた。

 関係者によると、今回実施された検察側と弁護側がそれぞれ推薦した鑑定人の鑑定結果が、いずれも遺留物と菅家受刑者のDNA型は不一致と出たという。鑑定人からの報告書は月末にも東京高裁に提出される見通しという。

 再審請求をめぐっては、弁護側が菅家受刑者の毛髪を取り寄せて、最新技術で鑑定し、有罪の根拠となったDNA型と異なる結果を示した新証拠などを提出したが、宇都宮地裁で棄却され、東京高裁に即時抗告。高裁が昨年十二月、再鑑定の実施を決めていた。

 菅家受刑者は任意の調べを受けた当初、容疑を否認していたが、DNA型が一致していることを取り調べで指摘された後に認める供述を始めた。一審の公判の途中から無罪を主張。最高裁は二〇〇〇年七月、DNA鑑定について「科学的に信頼できる方法で実施され、信用できる」と判断した。

 そのうえで「科学技術の発展で、新たに解明された事項なども加味して慎重に検討されるべきだが、このDNA鑑定を証拠として用いることが許される」として、一審の無期懲役が確定していた。

 弁護側は「当時はDNA鑑定の黎明(れいめい)期。格段に精度が高くなった現在の技術で再鑑定すべきだ」と主張していた。

<足利事件> 1990年5月12日、栃木県足利市のパチンコ店駐車場で、保育園児=当時(4つ)=が行方不明になり、翌日近くの渡良瀬川河川敷で遺体で発見された。栃木県警の周辺聞き込みなどで、元幼稚園バス運転手の菅家利和受刑者が浮上。91年12月、女児の下着に付いた体液とDNA型が一致し、犯行を認めたとして逮捕された。1審途中で自白は二転三転し、最終的に否認したが1、2審で無期懲役の判決を受け、2000年に最高裁で確定した。

 

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