2009年4月19日9時30分
献血に参加した大阪市の40代女性が採血針で腕の神経を傷つけられ、上肢まひの後遺症が残ったとして、日本赤十字社(本社・東京都港区)に約1億3千万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こし、日赤が賠償金7180万円を女性に支払う内容で和解していたことがわかった。献血での事故をめぐり、日赤側が今回のような多額の賠償に応じるのは異例。
女性は、傷ついた神経が過敏になって手足がしびれたり、激しく痛んだりする反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)を発症した。厚生労働省によると、献血による健康被害は年間5万〜6万件報告されているが、めまいや皮下出血などが大半で、RSDの発症例はまれという。
訴状によると、女性は03年7月、大阪市内で行われた日赤の献血に参加した。看護師が右ひじの血管に採血針を入れたが、手間取ったため、別の看護師に交代。女性は鋭い痛みを感じ、「やめてください。別の所にしてください」と求めたが、看護師は「大丈夫です」と言い、約20分間、針を動かし続けた。結局、採血はできなかったという。
女性は痛みが治まらず、翌日に病院で受診。末梢(まっしょう)神経が損傷していると告げられ、その後、RSDと診断された。肩から指までまったく動かせなくなり、回復は困難な状態という。
06年5月、「安全注意義務を怠った看護師の不法行為について日赤に使用者責任がある」として提訴。日赤側は治療費や通院交通費など約211万円を女性に支払いながらも、「発症には心因的な要因もある」などと主張し、因果関係を全面的に争ったが、今年3月下旬、最終的に和解に応じた。和解調書によると、日赤は「損害賠償債務」として7180万円の支払い義務があることを認めている。