仕事を失った日系ブラジル人などに対して、国は帰国するための費用を支給する制度を今月から始めました。しかし、制度を利用するための「ある条件」が波紋を呼んでいます。
「本当はブラジルに戻ることは考えてなかった」(静岡県浜松市で暮らすブラジル人のマセドさん)
静岡県浜松市で暮らすブラジル人のマセドさん一家。景気悪化の影響で日系3世の妻・ルシアナさんは仕事を失い、マセドさんの仕事も激減しました。家族4人で暮らすのが厳しくなり、妻と娘をブラジルに帰そうと考えています。
国は、今月から仕事を失い、帰国を希望する南米国籍の日系人に対して、帰国費用として本人に30万円、扶養家族に20万円を支給し、帰国を支援する制度を始めました。日系人は定住者扱いで、3世まで自由な就労が認められています。
ところが、問題となっているのは支援金の支給条件です。厚生労働省はパンフレットで「日系人として再入国をしないと決意したこと」と明記しているのです。
「あなたたち いらないから、日本から出てけという感じ」(日系人)
現地ブラジルの日本語新聞でも、この制度の問題が大きくとりあげられています。
「問題になっているとしたら、支援が伝わるよう関係省庁に働きかけたい」(中曽根弘文 外相)
厚生労働省は・・・
「再度の入国は“当分の間”できない。ニ度ととか排除するような趣旨のものではない」(厚労省外国人雇用対策課 長澤達士 課長補佐)
厚労省は「当分の間」再入国はできないという趣旨だと説明します。しかし、元入国管理局長の坂中氏はこう指摘します。
「(再入国の)条件としてつけているのは大問題。著しく人道に反する」(元東京入国管理局長 坂中英徳氏)
妻と娘2人を母国のブラジルに帰そうとしているマセドさん。帰国するための旅費もなく、支援金を受けたいが、再び家族一緒に日本で暮らせなくなるのではと不安を感じています。
「私はその(支援)金は使いたくない。ちょっと心配」(マセドさん)
日系人たちは苦渋の選択を迫られています。(18日16:23)