2009年4月18日1時44分
16年夏季五輪に立候補した東京都を訪れている国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会が17日、競技会場予定地などを視察した。シカゴ(米)、リオデジャネイロ(ブラジル)、マドリード(スペイン)との争いの中、首都を駆け足で巡った評価委員の目に、東京のプランは魅力的に映ったのか。
朝8時半、都内のホテルを出発した評価委員13人は、環境に配慮したハイブリッドバスに乗って約30カ所を回った。現在の東京の街に五輪施設を加えた千分の一の模型を披露したり、64年東京五輪のメーン会場だった国立競技場の聖火台に火をともしたりして演出。マラソンの高橋尚子さん、レスリングの浜口京子選手ら五輪メダリストが出迎え、歓待ムードを高めた。
天気予報に反し、雨は夕方近くまで落ちてこなかった。「天も味方してくれた」。東京招致委の幹部は胸をなで下ろした。雨だと、道路は渋滞しがち。競技会場の大半を半径8キロ圏に収め、「世界一」と東京がアピールするコンパクトさも、評価委のバスがスムーズに移動できなければ好印象につながらない。
都などは視察に備え、日程が決まった今年1月以降、金曜日の同じ時間帯に試走を繰り返し、混雑個所を調べあげた。ルート周辺の道路工事も評価委滞在中はやめるように道路管理者らに要請した。
背景には大阪の苦い教訓がある。08年夏季五輪に立候補しながら惨敗した要因の一つは交通渋滞だった。視察中に渋滞に巻き込まれた評価委のリポートで「いくつかの会場は想定した所要時間での到着が難しい」と指摘された。
17日は都職員らが約30分前に評価委に先行してルートを車で走り、混雑状況を調査。事故渋滞などに備え、代替ルートにも車を走らせた。
評価委がホテルに戻ったのは予定通りの午後5時半。夜の会見で、招致委の河野一郎事務総長は「定時運行出来たのが一番のハイライト」。石原慎太郎都知事は「江戸っ子のホスピタリティー(もてなしの心)、日本人が持つ独特の親和感を評価委員に感じてもらえた」と総括した。
東京は今回、五輪招致を手伝った経験がある外国人コンサルタント10人以上と契約。強調されたのは「IOCを第一に考えろ」だった。委員を手厚くもてなすため、経歴や家族構成、趣味、誕生日なども事前に調べた。