2009年4月18日1時44分
招致関係者の一人は、2年ほど前に聞いたIOC職員の言葉が忘れられない。
「respect the IOC(IOCを敬え)」
近年の五輪では、都市活性化の起爆剤に、ともくろむ先進国の首都級がこぞって名乗りを上げる。東京の招致費用は民間資金を含め150億円。プレゼンテーション用映像制作費や車両費、会場費など評価委対応に使った税金は今年度予算だけで3億円に上る。「(IOCは)開催させてあげるという姿勢だが仕方ない。勝つために最大限の準備をした」と招致関係者。
ただ、巨額投資には「都民の暮らしを犠牲にしている」などの批判も根強い。17日、評価委が訪れた主会場予定地では市民団体が待ち受け、拡声機を使って「五輪より教育を」「五輪より福祉にカネを」と訴えた。市民団体メンバーの一人は「都はこれまでスポーツ行政に冷淡だった。五輪と名がつけば何でもありになるのか」と批判した。
五輪招致の都内の世論支持率は69%で、候補4都市の中で最低。「都民総意」の歓迎ムードとは言いがたい。
カネをつぎ込んでも、大願が成就する保証はない。2年前にIOC委員の投票があった14年冬季五輪招致では、評価委のリポートで最高評価だった平昌(韓国)が、プーチン大統領(当時)がIOC総会の会場に駆けつけて全面的に支援したソチ(ロシア)に敗北。夏季五輪でも12年大会招致で、リポートは一番だったパリがロンドンに負けた。
今回の視察では、海外メディアも「TOKYO」の実力を見極めに来日している。7日に視察を終えたシカゴを含む4都市すべてを取材する五輪取材歴40年の英国人ジャーナリスト、モーリー・マイヤーズ氏は「コンパクトな会場配置など、シカゴと計画の優劣はほとんどない」と話す一方、「大きな減点さえなければ、視察は儀式に過ぎない。評価委のデータより個人的な人脈が投票を左右するのは、過去の歴史が証明している」と冷ややかに見る。
今後は6月の立候補4都市によるスイスでのプレゼンテーションなどを経て、10月2日のIOC総会(コペンハーゲン)で、IOC委員約100人の投票により開催都市が決まる。(稲垣康介、池田敦彦、平井隆介)