「ガンダムW」以上の難産の作品はない! と語るお二人に、当時を振り返ってお話していただきました。
実は、主役機のコンセプトは「撃ち落とされるガンダム」だったんですよ。「オペレーション・メテオ」という名前に残っていますが、企画時点でのタイトルは「メテオガンダム」でしたね。
それはスタッフも同じ気持ちでしたよ(笑)。でも富岡さんが「やる」と言ったので、監督の池田成さんが、それまでのガンダムの作品を全部見た上で、1週間ぐらいでキャラクターやMS設定、40話までのストーリー構成まで書き上げてきたんです。それを見て、僕はすごいと思いました。「ファーストもZもGも全部やる」と池田さんが言っていた通りの内容で。だから、それを企画書にまとめて、キャラクターを詰めていく作業は本当に楽しかったです。
あれは画期的だった! キャラクターに沿うセリフを置くと、細かく設定を書くよりもキャラクター性が伝わるんですね。ところが企画書に書いたセリフが全然使われないので、痺れを切らして、後半に僕が自分で使いました。 「命なんて安いもんさ……特にオレのはな」 最近ゲーム売り場で、緑川光さんのこのセリフを声で久々に聞いてちょっと感動しました。今はゲームがどんどん発売されていて、その度に声を録り直ししているみたいですね。 後、周囲の方には大変不評だったのですが、 「いったいお前のせいで何人死んだと思っているんだ!」 と聞かれて、 「昨日までの時点で、98822人だ」 <第48話「混迷への出撃」> と返すトレーズ。 普通なら「そんなこと私に関係ない」と返すのですが、トレーズは言ってみせる。 トレーズ最高です!
もう12年も前だから、細かく覚えていないなぁ。前半1クールは、どの話数もインパクトがあったし、おもしろいセリフもあったよね。 「ヒイロー、わたくしを殺しにいらっしゃーい」 <第4話「悪夢のビクトリア」> 「任務完了」 <第2話「死神と呼ばれるG」>
10話目にして主人公死亡なんていう展開、ありえないですよね。でも「ガンダムW」は池田さんが「おもしろい!」と言ったら採用されたんです。11話以降の作業にも入っていたのに「自爆……そうなるよね。うん、おもしろい、採用!」。そのシーンの絵コンテに「ヒイロはこれで死んでいるよね」と感想めいたこと書いてあって、半信半疑でフィルムを見たら、死んでいるようにしか見えないんです。僕らもビックリですよ!
プロデューサーからして、おもしろいもの勝ちですから!
僕は最初の試写会で第1話を見たときの、会場の反応が印象に残っていますね。サンライズの重役の方がズラリと並んで見るんですが、お歴々の皆さんは、さすがに戦闘シーンぐらいでは驚かないんです。ところが、後半に学園モノのノリになると、ソワソワしだしたんです。1号機も海の底に沈んじゃって「オモチャが売れないのでは?」「これからどうするのか?」なんて思ったんでしょうね。それで、ああこれはいい作品だなって確信したんです。あのかっこいいOPにも動じなかった重役たちが、ドヨめいたんですから。
僕は逆で、テレビシリーズでやり残していたことがいっぱいありました。最終話のシナリオをひねり出すのに1ヶ月以上悩みましたから。拾えきれなかったネタ、描ききれなかった所が山ほどあって、僕の中では終わっていなかったんですね。そんな時、やるはずだった仕事がなくなってヒマになって、富岡さんが渋い顔で「やる?」と声をかけてきてくれたんです。もう喜んで「やる、やる」と返事をしたら、制作が始まってしまいました(笑)。
放送終了後にも関わらず、W人気にあやかってゲームやマンガが、僕らのあずかり知らぬ所でどんどん始まっていたんです。逆に「続編っぽいものを書いてくれ」という依頼もあちこちからきました。書こうと思えば延々と書けるのですが、富岡さんは「それは潔くない」と言っていて。だからきちんと終わらせようということになりました。 でもタイトルは「Endless Waltz」。これは周囲の状況を皮肉った題名になってしまいましたね。(笑)
それは、池田さんのテレビシリーズ最終話の構想なんです。それを逆手に取って、ガンダムがなくなっても戦争は終わらなかった。じゃあどうする。という所から物語を始めました。
Wはメカ的な演出が少ないんですよね。MSの発進シークエンスを入れるよりも、ドラマを描く。女の子にとってはそれが良かったんですが、逆に男の子はメカ演出が薄いから燃えなかったのかもしれません。「Endless Waltz」ではメカシーンをきちんと演出したので、男の子も見てくれたのかもしれません。
ちょうどウィングガンダムの作画制作をしている時期に、ディズニーのアニメスタッフの方がスタジオ見学にいらっしゃって、ビックリしていたそうですよ。「日本人は翼の羽が舞い散るのを全部手で描いているのか、クレイジー!」って。
フィルムだからできたことですよね。デジタルテレビで見ても困らないです!
【近況情報】 ■富岡氏 現在は「結界師」をプロデュース。会社業務と平行して、制作に関わり続けている。 ■隅沢氏 角川スニーカ−文庫「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz」(上・下巻)刊行のため、その作業が一段落ついた所。初版原稿のデータは、当時使っていたワープロのものでデータの移行ができず、単行本を見て一から元原稿を作る“リマスター”作業が大変だったとか。文庫は加筆されて、新装版として発売され、当時のあさぎ桜さんの挿絵もそのまま収録。この本を読んでから「ガンダムW」を見直すと、より一層楽しめるはず!
ガンダムW対談
「ガンダムW」以上の難産の作品はない! と語るお二人に、当時を振り返ってお話していただきました。
実は、主役機のコンセプトは「撃ち落とされるガンダム」だったんですよ。「オペレーション・メテオ」という名前に残っていますが、企画時点でのタイトルは「メテオガンダム」でしたね。
それはスタッフも同じ気持ちでしたよ(笑)。でも富岡さんが「やる」と言ったので、監督の池田成さんが、それまでのガンダムの作品を全部見た上で、1週間ぐらいでキャラクターやMS設定、40話までのストーリー構成まで書き上げてきたんです。それを見て、僕はすごいと思いました。「ファーストもZもGも全部やる」と池田さんが言っていた通りの内容で。だから、それを企画書にまとめて、キャラクターを詰めていく作業は本当に楽しかったです。
「ことはすべてエレガントに。レディ?」
<第10話「ヒイロ閃光に散る」>
と、トレーズがレディ・アンに伝えるんです。(※実際にこのセリフをしゃべったのはノイン)彼女は、トレーズが風呂で話すシーンで、彼の言うことを聞いて伝える役として僕が作りました。
あれは画期的だった! キャラクターに沿うセリフを置くと、細かく設定を書くよりもキャラクター性が伝わるんですね。ところが企画書に書いたセリフが全然使われないので、痺れを切らして、後半に僕が自分で使いました。
「命なんて安いもんさ……特にオレのはな」
最近ゲーム売り場で、緑川光さんのこのセリフを声で久々に聞いてちょっと感動しました。今はゲームがどんどん発売されていて、その度に声を録り直ししているみたいですね。
後、周囲の方には大変不評だったのですが、
「いったいお前のせいで何人死んだと思っているんだ!」
と聞かれて、
「昨日までの時点で、98822人だ」
<第48話「混迷への出撃」>
と返すトレーズ。
普通なら「そんなこと私に関係ない」と返すのですが、トレーズは言ってみせる。
トレーズ最高です!
もう12年も前だから、細かく覚えていないなぁ。前半1クールは、どの話数もインパクトがあったし、おもしろいセリフもあったよね。
「ヒイロー、わたくしを殺しにいらっしゃーい」
<第4話「悪夢のビクトリア」>
「任務完了」
<第2話「死神と呼ばれるG」>
10話目にして主人公死亡なんていう展開、ありえないですよね。でも「ガンダムW」は池田さんが「おもしろい!」と言ったら採用されたんです。11話以降の作業にも入っていたのに「自爆……そうなるよね。うん、おもしろい、採用!」。そのシーンの絵コンテに「ヒイロはこれで死んでいるよね」と感想めいたこと書いてあって、半信半疑でフィルムを見たら、死んでいるようにしか見えないんです。僕らもビックリですよ!
プロデューサーからして、おもしろいもの勝ちですから!
僕は最初の試写会で第1話を見たときの、会場の反応が印象に残っていますね。サンライズの重役の方がズラリと並んで見るんですが、お歴々の皆さんは、さすがに戦闘シーンぐらいでは驚かないんです。ところが、後半に学園モノのノリになると、ソワソワしだしたんです。1号機も海の底に沈んじゃって「オモチャが売れないのでは?」「これからどうするのか?」なんて思ったんでしょうね。それで、ああこれはいい作品だなって確信したんです。あのかっこいいOPにも動じなかった重役たちが、ドヨめいたんですから。
僕は逆で、テレビシリーズでやり残していたことがいっぱいありました。最終話のシナリオをひねり出すのに1ヶ月以上悩みましたから。拾えきれなかったネタ、描ききれなかった所が山ほどあって、僕の中では終わっていなかったんですね。そんな時、やるはずだった仕事がなくなってヒマになって、富岡さんが渋い顔で「やる?」と声をかけてきてくれたんです。もう喜んで「やる、やる」と返事をしたら、制作が始まってしまいました(笑)。
放送終了後にも関わらず、W人気にあやかってゲームやマンガが、僕らのあずかり知らぬ所でどんどん始まっていたんです。逆に「続編っぽいものを書いてくれ」という依頼もあちこちからきました。書こうと思えば延々と書けるのですが、富岡さんは「それは潔くない」と言っていて。だからきちんと終わらせようということになりました。
でもタイトルは「Endless Waltz」。これは周囲の状況を皮肉った題名になってしまいましたね。(笑)
それは、池田さんのテレビシリーズ最終話の構想なんです。それを逆手に取って、ガンダムがなくなっても戦争は終わらなかった。じゃあどうする。という所から物語を始めました。
Wはメカ的な演出が少ないんですよね。MSの発進シークエンスを入れるよりも、ドラマを描く。女の子にとってはそれが良かったんですが、逆に男の子はメカ演出が薄いから燃えなかったのかもしれません。「Endless Waltz」ではメカシーンをきちんと演出したので、男の子も見てくれたのかもしれません。
ちょうどウィングガンダムの作画制作をしている時期に、ディズニーのアニメスタッフの方がスタジオ見学にいらっしゃって、ビックリしていたそうですよ。「日本人は翼の羽が舞い散るのを全部手で描いているのか、クレイジー!」って。
今回のBOXには、OVAもすべて収録されるんですよね。フィルムだからできたことですよね。デジタルテレビで見ても困らないです!
【近況情報】
■富岡氏
現在は「結界師」をプロデュース。会社業務と平行して、制作に関わり続けている。
■隅沢氏
角川スニーカ−文庫「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz」(上・下巻)刊行のため、その作業が一段落ついた所。初版原稿のデータは、当時使っていたワープロのものでデータの移行ができず、単行本を見て一から元原稿を作る“リマスター”作業が大変だったとか。文庫は加筆されて、新装版として発売され、当時のあさぎ桜さんの挿絵もそのまま収録。この本を読んでから「ガンダムW」を見直すと、より一層楽しめるはず!