ネットで拡散…1億総チクリ時代にタレント戦々恐々
地方局での不祥事も日本中に
ブロードバンドの普及により、いまや“1億総チクリ時代”に突入した。従来はスルーされていた地方のテレビやラジオ番組の“不祥事”も、たちまちネットに乗って映像や音声が拡散。日本中に知れ渡る。不用意な発言で、著名人が謝罪や謹慎に追い込まれることも少なくない。イヤな時代になったものだ。
先日、大阪のラジオ番組にゲスト出演した落語家の桂ざこば(61)が、タレント・北野誠(50)の無期限謹慎処分に関連して、大手芸能事務所を連想させる言葉を絶叫するという一幕があった。これまでなら大阪ローカルのラジオ番組での“放言”としてスルーされていたところだが、今回はそうはいかなかった。
番組を録音していたリスナーの1人が、すぐに動画投稿サイトに音声をアップ。アクセス数は数時間で10万を突破した。投稿された音声は、著作権者である放送局の申し立てでいったん削除されたが、すぐに再投稿→削除された。現在はロシアの投稿サイトにアップされており、ネット上から音声を完全に消すのは不可能に近い。
倖田來未の「羊水発言」や、テレビ番組で殺人事件の被害者家族を犯人扱いしたみのもんた、バラエティー番組で局部を露出した笑福亭鶴瓶の失態なども、すべてネット上で確認できる。著名人ではないが、東京・秋葉原の連続殺傷事件の際、現場リポートするキャスターの背後でハシャギまわる観衆の映像が繰り返し投稿され、その不謹慎な態度に批判が集中。一部の個人情報が特定される事態もあった。
【誤解招く部分だけを】
著名人をおとしめる目的で、誤解を招くような発言部分だけを切り取って投稿されることもある。かつて、お笑いタレントの松本人志がラジオ番組で硫化水素自殺者を冒とくしたとする発言がネットに流れたが、これは前後の発言を意図的にカットしたもので、松本の発言趣旨はまったく逆のものだった。このときは、真相を確認しないまま安易に報じたネットメディアが、猛烈な“逆批判”にさらされるという結果を招いた。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、「とくに芸能人の話題は、誰もが共有しやすいことからネット上で『祭り』のターゲットになりやすい。番組での発言を常に監視するネットユーザーもいるほど。桂ざこばさんがどういう意図で発言したのかは分からないが、反響の大きさはご自身の想像以上だったでしょう」と話す。
井上氏自身、ラジオ番組でのちょっとした発言がネットにさらされたことも少なくないという。同氏の場合は、これまでの経験から「無視するか釈明するか」が判断できるようになったというが、ほとんどの著名人は番組出演の際にネットのことなど意識しない。とくにラジオ番組はスタッフも少ないため、身内意識が高まり“放言”が飛び出すこともままある。DJとリスナーが和気あいあいとハガキをやり取りしていた昔とは、もう違うのだ。
ZAKZAK 2009/04/17
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