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NPOフローレンス 病児保育事業
関心高まる非施設・共済型モデル
女性医療従事者のキャリア形成を支援
2009.4.15

 子どもが熱を出しても、休めない−。高度な専門性が求められる医療現場では、代替要員をすぐさま確保することは難しい。働く女性医療従事者が存分に職能を発揮するには、就業継続やキャリア形成の上で最大の阻害要因となっている「保育」の整備・改善は避けて通れない問題だ。こうした中、非施設・共済型の病児保育モデルに、病院や大学からの関心が集まっている。

 保育施設の不足が叫ばれる中、「病児保育」に至っては小児科診療所に併設された医療機関併設型や保育施設併設の保育所型、病児保育を専門とする単独型−の3類型のサービスがわずかながら提供されてきた。

 全国約3万の保育施設数に対し、病児保育は500〜600施設と全体の3%程度にすぎない。収益に対する固定費・人件費の割合が高いため、赤字体質を払拭できないためだ。国の助成制度もあるが、補助を受けると病児1人当たりの利用料が2000円までに制限されてしまうため、仮に4人預かったとしても1日8000円の収入にしかならない。

 子どもの発病・発熱は突発的だ。病児保育施設は常に利用があるとは限らず、施設稼働率は変動的になる。一方で、感染症の流行期に病児が重なれば、施設の受け入れ能力を超えてしまう。

 そこでNPO法人フローレンス(東京都新宿区)では、<1>非施設型<2>共済型という新しい事業モデルによって、既存モデルの問題を解決した。

 サービスを利用するには会員となる必要がある。病児保育が必要になった場合、「こどもレスキュー隊(看護師、保育士、保育・子育て経験者など)」が利用者宅に駆け付け、保護者に代わって病児をかかりつけの小児科に連れて行き、診療を受ける()。受診後は利用者宅か、隊員宅などで病児を預かるため、固定費がかかる保育施設は必要ない。

 また、会員からの入会金(2万1000円)・月会費(4725円〜)による共済システムにより、補助に頼らずに事業を継続展開する仕組みを実現した。月会費は平均7000円程度(毎月1回利用料を含む)で、対象となる子どもの年齢や利用頻度によって、3カ月ごとに見直しされる。自動車保険のように、利用頻度が低ければ、月会費は下がる。

 サービス提供地域は昨年12月に東京23区内全域にまで広がった。2012年度中には都全域を網羅する計画で、神奈川県や千葉県などの近県にもサービスを拡大したいという。

 全国に病児保育を広めるため、ノウハウ移転のコンサルタント事業も展開している。「院内保育所はあるが、病児保育までは設備投資できない」という病院からの問い合わせもあるという。

●「保育」は病院・大学の基本インフラ

 病院や教育・研究機関である大学にとって、優れた人材を確保し、流出を防ぐには労働環境の改善が最重要課題の1つとなる。少子高齢化で、女性の労働力がますます期待される中で、「保育」は欠かせない条件となる。

 大学で保育施設を整備する動きもある。東京大は、世界のトップクラスの教育研究機関では女性研究者のための保育施設は基本インフラであるとの考えから、業績を上げるための重要戦略として、4つのキャンパス内に直営の4施設を含めた7つの保育施設を開設している。

 東京医科歯科大大学院では、女性研究者支援室がフローレンスとともに女性の教職員や学生向けの病児保育サービスを開発し、6月からサービス提供を開始する。

(写真提供:NPO法人フローレンス)


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