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ドスーン、ドドドドッ 都心に地響き 重機が直撃

2009年4月14日12時22分

写真:横転し、国道20号をふさいだ大型クレーン車=14日午後0時5分、東京都千代田区麹町4丁目、樫山晃生撮影横転し、国道20号をふさいだ大型クレーン車=14日午後0時5分、東京都千代田区麹町4丁目、樫山晃生撮影

写真:車の運転席に人が閉じこめられ、救助作業が続いていた=14日午前11時44分、東京都千代田区麹町4丁目、本社ヘリから、堀英治撮影車の運転席に人が閉じこめられ、救助作業が続いていた=14日午前11時44分、東京都千代田区麹町4丁目、本社ヘリから、堀英治撮影

 突然、大型クレーンが倒れ落ち、都心の大通りをふさいだ――。その下には、車や通行人。14日昼前、東京都千代田区麹町4丁目の工事現場で起きた事故は、6人がけがをして、うち歩行者とクレーンのオペレーターが重体になった。一時車内に閉じ込められた人もいた。クレーンはなぜ、倒れたのか。

 麹町署などによると、現場では複合マンション「麹町パークハウス」の新築工事が行われていた。クレーンが新宿通りの片側3車線全体をふさぐ形で横転。中央分離帯寄りの車線で、トラックの運転席部分がアームでつぶされた。トラック内に男性3人が閉じ込められたが、間もなく救助され、病院に運ばれた。3人は運転していた29歳と席に並んでいた39歳と40歳で、いずれも意識はあるという。また、歩行中の男性(33)もけがをした。

 東京消防庁によると、クレーン車は、地中に埋めた重さ6トンのパイプ(長さ約2メートル)を引き抜く作業をしていた。パイプを地上3メートルの高さまで引き上げたところで転倒したという。アーム部分は長さ約27メートルある。

 クレーンは「大洋基礎」(東京都中央区)が所有。工事は「東亜建設工業」(千代田区)が施工していた。大洋基礎によると、5〜6年前にも、東京都港区の工事現場でクレーンのアームが倒れる事故があった。けが人はなかったという。

 現場を目撃した人は、その恐怖を語った。

 現場から数十メートルの飲食店に勤める小森美佐子さん(70)は、店に戻るときにクレーンが倒れる瞬間を見た。

 「クレーンが強風にあおられ、バランスを崩して傾いていた。『倒れるかな』と思っていたら、風に乗るような感じでどんどん傾いてきて、ゆっくりとアームが自分の方に倒れてきた。怖くて動けなかった」

 近くにいた人は大きな音や揺れを感じた。現場の斜め向かいのビル3階にいた設計事務所の所長(41)は「ドスーン、ドドドドッ」という異様な音に驚いた。工事現場で資材が崩れたのかと思って窓のブラインドを上げると、倒れたクレーンが目に入った。外に飛び出すと、トラックの運転席の前部分がつぶれており、中で運転手が動いていた。「あと30、40センチずれていたら危なかった」。付近にはタオルで頭をおさえている人もいた。

 近くのビル2階にいた男性(50)は「ズズズズという音が5秒続いて、バーンという大きい音が聞こえた。窓から見ると、クレーン車が1台の車を押しつぶしていた」。会社員の男性(32)は「ドーンという音とともに、振動がした。地震かと思った」。

 現場から約100メートル離れた場所で別の工事の警備にあたっていた男性は、「『ガシャーン』という、鉄の塊がたたき付けられるような音に驚いた。トラックの運転席にはクレーンのアームがめり込んでいた」という。

 また、現場に近い紳士服店の女性店員(41)によると、ガラガラガラと音がして、直後にクラクションの音が響いた。工事関係者らしい人がトラックに取り残された人を助け出そうとして、扉をあけようとしていたがなかなか開かない様子だった。「早くしろ」と怒鳴り声が聞こえたという。

 現場は国道20号に面しており、三菱地所が事業主体となって地上19階、地下2階建ての分譲複合マンション(65戸)を昨年末から建設中だった。14日は建物の基礎工事をしていた。クレーン車からつるしたドリルで深さ約30メートル、直径約2メートルの穴を掘り、くいを打つ作業などをしていた。千代田区によると、11年3月末までに完成予定だったという。

 クレーン車を所有している大洋基礎(東京都中央区)によると、操作していたのは社員ではなく、協力業者だという。同社の安全担当者のもとには事故直後に「基礎工事を行う機械が転倒した。第三者を巻き込んでしまった」と連絡があった。同社は「被災者には申し訳ない」と話した。

 建築現場の基礎工事で使われる移動式のクレーンは、建築基準法の施行令で、敷板などを用い、工事現場周辺に危害をもたらさないよう転倒防止措置を講じなければならないと定められている。国土交通省は14日午後、職員を現場に派遣して、敷板を設置するなど転倒防止策をとっていたかどうか、確認を進める。

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