堀院長のまめ知識コラム


妊娠中のカフェイン摂取
05/10/27更新


ただでさえストレスの多い現代社会、妊婦さんはなおさらその傾向が強いものです。食後のコーヒーはそんな気持ちを和らげてくれるなくてはならないものです。しかしカフェインは胎盤を容易に通過するため、妊婦さんがコーヒーや紅茶、お茶などを飲むとおなかの赤ちゃんにもカフェインが移行します。

カフェインには
1) 中枢神経興奮作用: 感覚受容や精神機能を高め、眠気や疲労を除去し、運動機能を高めます。
2) 骨格筋に対する作用: 疲労感をおさえ、活動性を増大させます。骨格筋に直接作用し筋肉の収縮を増強します。
3)心臓に対する作用: 心筋に直接作用し収縮力、拍出量を増加させます。
4)利尿作用: 腎臓の血管を拡張させ腎臓への血流量が増加し尿の生成をうながします。
5)胃酸分泌を促進  
6)基礎代謝を増加  
などの作用がありますが、大量に摂取すると不眠、不穏、精神興奮、筋緊張、頻脈、呼吸促進などがみられます。

妊娠中はカフェインを分解、排泄するのに時間がかかります。特に妊娠末期には代謝速度が1/3になり、妊婦さんのからだに長く残ることになります。またカフェインは胎盤を通過し胎児に移行するため、おかあさんと同じ血中濃度になりますが、胎児は肝臓の機能が未熟なためカフェインを排泄できずに胎児の体内に高濃度のカフェインがとどまることになります。

それでは胎児、赤ちゃんへの影響はどうでしょうか。

流産、死産率については、カフェインの摂取量が1日150mg未満の妊婦に較べて300mg以上摂取する妊婦の流産のリスクが2倍に、コーヒー1日8杯以上で死産のリスクを高めるという報告があります。カフェインは胎盤を流れる血液の量を減少させますが、胎児発育との関連性のついては関連があるという報告と、ないという報告の両方があり、いまのところは結論がでていません。しかしカフェイン摂取と同時に喫煙をする習慣のある妊婦では明らかに胎児の発育の遅れがみられ、早産の傾向も認めます。

またカフェインは母乳にも移行するため、授乳中、多量に摂取すると赤ちゃんがイライラしたり落ち着きがなくなったりすることがあります。また乳児突然死症候群の発症率が増加することがわかっています。  

しかしこれらのデータはあくまでも大量に摂取した場合で、1日数杯程度なら問題はありません。ゆっくりとコーヒーを楽しんでリラックスしてください。

これから寒い季節になります。紅茶にからだを温める作用のあるショウガをいれてインド風にしてみたり、ハーブティーにかえてみたり工夫してみてはいかがでしょうか。ただ砂糖の入れ過ぎには注意しましょう。また貧血にコーヒーは良くないと言われます。コーヒーや緑茶の中のタンニンが鉄の吸収を妨げるためですが、貧血(鉄欠乏性貧血)治療のための造血剤の服用は、貧血の場合鉄の吸収率が高くなるのでコーヒーと一緒に飲んでもかまいません。

最後に代表的な飲料のカフェイン含有量を示します。参考にしてください。

    コーヒー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 100〜150mg/杯
    インスタントコーヒー‥‥‥‥ 90mg/杯
    紅茶‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 75mg/杯
    インスタント紅茶‥‥‥‥‥‥ 30mg/杯
    コーラ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 40〜60mg/瓶
    ココア‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10〜20mg/杯
    煎茶、ウーロン茶‥‥‥‥‥‥ 40〜50mg/杯
    麦茶‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 0mg

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