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【神奈川】

“おやじ”の悲報に憤り 秦野・模型店主刺殺 胸など多数の傷 死因は失血死

2009年4月11日

事件があった模型店が入るビル=秦野市で

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 秦野市本町一の「ますだ模型」の店主増田守男さん(79)が刺殺された事件。多量の血痕が飛び散った現場には模型商品が散乱し、凄惨(せいさん)な様相を見せた。半世紀余を模型店一筋に生き、訪れる子どもや愛好家らから、“おやじ”のように親しまれた店主の悲報に関係者から悲しみと怒りの声が漏れた。

 県警によると、店内は八畳ほどの大きさ。山積みされた模型の商品棚に囲まれた通路は人一人がようやく通れるほどだった。増田さんは胸や背中、首など少なくとも十カ所以上を刺されたり切られたりしていた。司法解剖の結果、死因は失血死だった。

 県警が現場検証したところ、レジ裏の商品棚にも血痕が付着していたことが判明。店中央の棚から模型商品の一部が落ちて散乱していたことから、県警は、増田さんがレジ付近で襲われ、入り口へ逃げようとした際、さらに襲われた可能性があるとみている。

 常連客によると、増田さんは普段、店の左奥のレジに座ってパソコンをいじっていた。入り口の自動扉にポスターなどが張られ、外から店内が見えないため、この常連客が「不用心じゃないか」と話すと、増田さんは「長年やっているから」と気にとめていない様子だったという。

 同店はよほどの用事がない限り年中無休。鉄道模型月刊誌の付録に「創業五十年余の老舗。在庫が豊富です」などと店の紹介を載せていたほか、ホームページを見て訪れる人もいた。昨年一月、小田急の新型車両模型が出たときには常連客に「二百セットを仕入れた」と話していたといい、常連客を含めかなりの客が出入りしていたとみられる。

◆『恨み買う人じゃない』

 「人の恨みを買うような人じゃない」。増田さんを知る店の常連客や近所の住民らは一様に声をそろえた。

 増田さんの模型店に二十年以上通い、部材を仕入れて鉄道模型製作請負の工房を営む三宅常正さん(45)=小田原市内で=は「言葉が丁寧で聞き上手だった。とかく自己中心になりがちな模型をやる人間の話にも丁寧に対応してくれた」と顔を曇らせた。

 そんな増田さんの温厚な人柄を慕って来店する常連客も多く、中には「おやじを殺されたようだ」と言う人もいるほど。

 十日、現場に白い花を供えた秦野市内のパート男性(38)も常連客の一人。二十年ほど前、入手困難だった海外車の模型を探していると、増田さんが問屋を通じて取り寄せてくれた。今でもその模型は部屋に飾ってあるという男性は、「初めての客にも優しかった。殺されるなんて…。犯人は許せない」と語った。

 店を訪れるのは、五十−六十代から子どもまで幅広かった。近くの飲食店従業員の女性(68)は、「子どもが高価なものを買おうとすると止めてくれた。安心して子どもを任せられる人だった」と振り返る。

 増田さんの義弟(75)は、「本当に昔から模型が大好きで、子どもたちにも好かれていた。事件を聞いて、悔しくて眠れなかった。何とか犯人を捕まえてほしい」と話した。

 (長崎磐雄、樋口薫、細見春萌)

 

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