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『ゆでたまご先生』 その4

1987年、『キン肉マン』の連載を終了したゆでたまごのお二人。その後さまざまなジャンルのまんがを発表した後、1年ほどの充電期間を経た1998年、『キン肉マンⅡ世』の連載を開始します。なぜ続編の連載を決めたのか? そして今年、誕生29(にく)周年を迎える「キン肉マン」はこれからどうなるのか? ゆでたまご先生自ら語ってくださいまいた。

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そしてキン肉マン誕生29周年へ!

――『キン肉マン』が惜しまれつつ終了した後、『ゆうれい小僧がやってきた!』『SCRAP三太夫』『蹴撃手マモル』など、さまざまな作品を描かれますが、妖怪もの、ロボットもの、ムエタイものと、どれもジャンルが異なってますよね。グルメまんが(『グルマンくん』)を始めたときは本当にビックリしました。

中井:グルメは相棒が格闘技の次に得意とするところなんですよ。

――嶋田先生は料理がお好きなんですか?

嶋田:大好きなんですよ。さっきも言いましたが、うちは母子家庭だったので、オフクロが残業の日には、弟や妹のごはんを作らないといけなかったんですね。あと、やっぱり『包丁人味平』(原作:牛次郎/作画:ビッグ錠)とかが大好きだったんで……(笑)。

昔の料理まんがって、味がどうのこうのじゃなくて、ビジュアルがすごいじゃないですか。もう、アトラクションですよね。ああいうのをやりたかったんです。だから『グルマンくん』はホンマに趣味でやっていた感じです。

――さて、その『グルマンくん』完結後、「ゆでたまご」は1年ほどお休みしていますよね。その間はなにをされていたんですか?

嶋田:毎週相棒とグルメ大会をやってました。

中井:お互いに美味しい店を探して、交代で店を決めて、一緒に食べに行ってたんですよ。

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(写真左)嶋田先生      (写真右)中井先生

――充電期間も一緒にいるなんて本当に仲がいいんですね!
 さて、その1年のお休みの後、1998年から週刊プレイボーイで『キン肉マンII世』が始まりますが、これはどういう経緯で始まったものなんですか?

キン肉マンII世

嶋田:最初、週刊プレイボーイ編集部から、読み切りを描いてくれないかっていうオファーがあったんですよ。その時は別に『キン肉マン』の続編ということではなかったんですが、そういうこととは別に、スケジュール的にタイトだったんで、お断わりしたんですね。

そうしたら、またいらっしゃって「じゃあ『キン肉マン』は描けないですか?」って提案してきたんですよ。でも当時、自分たちの中で『キン肉マン』は描ききったという気持ちがあったので、やっぱりお断わりしたんです。

ところが編集部があきらめないんですね。次は「キン肉マンの息子の話はどうですか」って。

その話を聞いたとき、歳を取ってよぼよぼになったスグルというのは、全然想像がつかなくていいかなと思ったんです。『野球狂の詩』(水島新司先生)の岩田鉄五郎みたいで面白いなと。

それで、それならできるかもしれないと引き受けたんですが、その後がけっこう大変でしたね。

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(写真左)嶋田先生      (写真右)中井先生

中井:僕には太って自堕落なスグルは想像できたんですけど、よぼよぼというのが想像できなかったんですよ。それに、今までカッコ良く描くことにこだわってきたのに、そんなよぼよぼのスグルを描いたら終わりじゃないですか?

だから、当初はちょっと抵抗がありました。

嶋田:それで、外見はよぼよぼなんだけど、かっこよく見せるとか、いろいろ考えました。たとえば、マッスルスーツを着させて、外見だけ全盛期にもどったスグルを登場させるとか。

中井:あれって、発想はギャグなんですけど、見た目は全盛期じゃないですか。それは描いていて楽しかったですね。

それにひさびさの『キン肉マン』ということで、相棒の原作からも「生きているな」って感じが伝わってきましたね。筆のノリが違うというか、とても生き生きしていた。

嶋田:原稿用紙に「キン肉マン」と書くだけでワクワクしましたからね。「ラーメンマン」と書くだけで、ああ、ラーメンマンがまた出てくるんだなとか。

――そんな作者の興奮が伝わったのか、読み切り版『キン肉マンII世』が好評で、結局連載化しました。今では『キン肉マン』を越えるほどの長期連載となりましたが、ここまでの作品になることは予感しておいででしたか?

嶋田:いや、本当に読み切り5回で終わるつもりだったんですよ。もちろん、この先どうなるかも分からないですね。昔考えていた時空を超えたタッグもやっちゃったし。もしかしたら、その次はまたいっぱい王子がでてくるかも(笑)。

――スグルが不倫して生まれた子供とかが戦うんですか?(笑)
 さて、これが最後の質問です。『キン肉マン』は、今年記念すべき29周年を迎えますが、このことについてお2人のお気持ちを聴かせていただけませんか?

中井:今度、キン消しつきのアニメ全話DVDボックスが発売されるんですけど、これについて一番後悔しているのが、「当時のキン消しを大事にとっておけば良かった」ということですね(笑)。全部、近所の子供たちにあげちゃったんですよ。

嶋田:あのDVDボックスは反響がすごいですね。いろいろな人から「ゆでたまごさんに頼んだら割引にならないか」とか言われます(笑)。

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(写真左)嶋田先生      (写真右)中井先生

――ちょっと高価ですからね(笑)。DVDボックスのほかに、29周年を記念したイベントみたいなのは行なわれないんですか?

中井:秘密です(笑)。2月29日の映画祭を筆頭に、記念本とか、いろいろ企画があるようです。

――ファンにとっては楽しい1年になりそうですね!

嶋田:29(ニク)周年ってのがシャレてて良いですよね。僕らも、みなさんとワクワクを共有できたら良いと思っています。一緒に楽しみましょう!

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嶋田先生

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中井先生

ゆでたまごプロフィール

嶋田隆司(しまだたかし) 1960年、大阪府生まれ
中井義則(なかいよしのり) 1961年、大阪府生まれ

1978年、『キン肉マン』が第9回赤塚賞準入選。その後、週刊少年ジャンプで同作品を連載(1987年まで)し、社会現象にまで発展するヒットを記録する。アニメ、映画、グッズ、ゲームなど積極的なマルチメディア展開も行なわれた。特に登場超人を模した「キン消し」は当時の子供たちの間で大流行となる。現在は、週刊プレイボーイ誌上で、続編『キン肉マン2世』を連載中。


「まんがのチカラ」次回予告
次回は、ストリートファイト(=喧嘩)のリアルを描いたまんが『ホーリーランド』の森恒二先生が登場です! 先生ご自身が経験された数多の喧嘩の話や、学生時代からの友人、三浦建太郎先生(『ベルセルク』)とのたくさんのエピソードを語ってくださいました。公開は3月10日。お楽しみに!

2008年02月29日