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『ゆでたまご先生』 その3

週刊少年ジャンプ誌上で大人気を博した『キン肉マン』。その後、キン肉マン消しゴムの発売やアニメの放送開始とその大ヒットにより、社会現象にまで発展することになります。そして、作者のゆでたまごのお二人は正に大成功を収めることになるのですが、当時の生活は意外なものでした。

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パチモノ登場で実感した社会現象的大人気

――さて『キン肉マン』は、その後、どんどん人気を高めていくわけですが、社会現象とまで言われるようになったのはいつごろなんですか?

中井:やっぱりキン消し(キン肉マン消しゴム)と、アニメの放送が始まってからでしょうね。

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キン消し(キン肉マン、キン肉マングレート、ジェロニモ、テリーマン)

――キン消しの方が先なんですか?

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嶋田先生

嶋田:そうなんですよ。しかも、僕らが知らないうちに、いきなり売ってた(笑)。

僕が近所のスーパーに行ったら、ガチャガチャの前に子供が群がっているんですよ。何かなと思ってみたら、自分たちの作品で……そのとき、「これはすごいことになってきたぞ」と感じましたね。

中井:僕は、『ブタ肉マン』っていうパチモノが出たときに人気が出ているんだなって分かった(笑)。当時は偽物が人気のバロメーターだったんですよ。

――そして立て続けにアニメ化という流れなんですね。いかがでしたか? 自分の作品がアニメ化されて。

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中井先生

中井:それはもう感動しましたね。キン肉マンの声優の神谷明さん(『北斗の拳』ケンシロウ役など)にはギャグのイメージがなかったのでちょっと不安だったんですけど、実際に動いている絵を見たら「ばっちりやな!」って。

嶋田:でも、アニメは最初、ちょっと視聴率が悪かったんですよ。日曜の朝放送だったんですが、裏に「笑っていいとも増刊号」があったので、全然視聴率が獲れなくて……。それで、プロデューサーさんに「ギャグの部分は省略して、早く超人オリンピック編に持っていった方がいいですよ」って言ったら、実際にそうしてくれて、それで視聴率がドーンと!

――まんがでもアニメでも人気のでるポイントは一緒なんですね。ほかに、要望を出したこととかはないんですか?

嶋田:オリジナルでいいからギャグをいっぱい入れてくれとお願いしました。

たとえば神谷さんの「へ、へ、屁がでる5秒前」ってのは、アニメのオリジナルなんですけど、あれには笑わされました(笑)。

中井:ああいうのは僕らには思いつかなかったんで、やられたって思いましたね。

――さて、少し下世話な話になるんですが、まんが、アニメ、グッズの大ヒットで生活が変わりますよね。もう、折半してもお金に困らない状態になったと思うんですが、実際はどうだったんですか?

嶋田:僕はアニメ化された以後も、蓮根の3万6000円のクリーニング屋の2階に住んでましたよ。

貯金通帳を見たらすごいいっぱい入ってたんですが、そういうのには無頓着でしたね。クルマを買おうとか、そういう気持ちにもならなかった。

――良いところに引っ越そうとかも考えなかったんですか?

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中井先生

中井:僕はよく引っ越ししてましたよ。常にあたらしい刺激が欲しかったので、1年おきくらいで引っ越してました。環境が変わると、また新鮮な気持ちで仕事に取り組めるんですよ。

ただ、別にいろいろなところに行くわけではなく、四ツ谷近辺をぐるぐる回っていただけなんですけどね。

『キン肉マン』時代の話をすると、よくお金の話を聞かれるんですけど、当時の所得税率は高くて、その上、住民税とかいろいろ取られるので、1割くらいしか残らなかったんじゃないかな。税金対策とかもぜんぜんやってなかったので、ごっそり持っていかれました。

――お金以外の生活面ではどのような変化がありましたか? ……彼女ができたとか。

嶋田:連載中は何にもなかったですよ。本当にまんが漬けでした。息抜きも毎週の人気アンケートの結果でしたから。「ああ今週も良かったぞ」って。

ただ、相棒は違いましたよね。なんせ、当時もう結婚してましたし(笑)。

――そうなんですね。奥さんは『キン肉マン』のファンだったりとかするんですか?

中井:いや、結婚したのは『キン肉マン』が売れる前なので、全然知らなかったはずです。

で、当時僕はまだ執筆室に住んでいたんですが、編集者に「もう出たら?」って言われまして、それでさっきも言った四ツ谷に引っ越すことになったんですよね。

ちなみに、当時の編集部は、僕を執筆室から出すために執筆室を壊すことにしたんですよ。それも四ツ谷に引っ越した理由の1つなんですが、結局、編集部が不安になって、四ツ谷に仕事場を構えたあとも、集英社の会議室に泊まり込むことになっちゃったんですよね(笑)。

――意味ないですね(笑)。ちなみに、先生は執筆速度は速いほうなんですか?

中井:遅いと思いますよ。だからカンヅメにされたんでしょう。

嶋田:執筆室に家財一式おいとったもんな(笑)。

――さて、そんな波乱の『キン肉マン』ですが、約8年で無事、完結しました。当時、連載を終わらせようと思った理由は何だったんですか?

嶋田:僕は「王位争奪戦編」が終わったあとも続けようと考えていて、「王位争奪戦編」に続く、次のシリーズを考えていたんですよ、未来の超人が過去の超人を選別しに来るという内容なんですが。

――あれ? それって今、「キン肉マンII世」でやっている内容ですよね?

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嶋田先生

嶋田:そうですね、あれは、本当は「キン肉マン」の続きの話として考えていたんですよ。でも、やっぱり長く続けていると人気が落ちてくるんですね。落ちたといっても真ん中くらいなんですけども。

で、当時のジャンプって、まだ人気のあるうちに終わるのがカッコイイって言われていたんですよ。だから、編集者が「もうそろそろやめましょうか」って言ってきて。僕らもそう思ったので、『キン肉マン』はあそこで終わりということにしました。

――お話的にも、王様になって終わるというのはキリが良いですもんね。

嶋田:そうですね。それで大増31ページをもらって大団円で終わったんです。

ゆでたまごプロフィール

嶋田隆司(しまだたかし) 1960年、大阪府生まれ
中井義則(なかいよしのり) 1961年、大阪府生まれ

1978年、『キン肉マン』が第9回赤塚賞準入選。その後、週刊少年ジャンプで同作品を連載(1987年まで)し、社会現象にまで発展するヒットを記録する。アニメ、映画、グッズ、ゲームなど積極的なマルチメディア展開も行なわれた。特に登場超人を模した「キン消し」は当時の子供たちの間で大流行となる。現在は、週刊プレイボーイ誌上で、続編『キン肉マン2世』を連載中。


「まんがのチカラ」次回予告
1987年、『キン肉マン』の連載を終了したゆでたまごのお二人。その後さまざまなジャンルのまんがを発表した後、1年ほどの充電期間を経た1998年、『キン肉マンⅡ世』の連載を開始します。なぜ続編の連載を決めたのか? そして今年、誕生29(にく)周年を迎える「キン肉マン」はこれからどうなるのか? ゆでたまご先生自ら語ってくださいまいた。次回は2008年2月29日(金)=キン肉マンの日に掲載予定!そしてそして、ゆでたまご先生編最終回!! お見逃し無く!

2008年02月22日