県内の公立9病院で、患者が治療や入院にかかった医療費を払わない「未収金」は判明分で総額4億円以上に上ることが、毎日新聞の調べで分かった。患者が生活に困窮して支払えないケースが多く、なかなか回収が進まないという。病院関係者からは「深刻な景気悪化の影響で、今後未収金が増加するのでは」と心配する声も上がっている。
県内の公立病院で最も未収金が多いのは市立敦賀病院で、90年度からの累計で今年2月末現在、総額約2億5900万円に上る。次いで県立病院は07年度までの未収金累計総額が1億1985万円になり、08年度はさらに増額する見込みという。
最も少ないのは若狭町の上中病院で60万円。同病院の担当者は「各集落の自治組織が集金するシステムなので未収が起こりにくい」と説明する。
各病院は未払い患者に督促状を送付したり、自宅を訪問して回収に努める一方、生活困窮者には生活保護などの公的福祉を紹介するなどして対応している。市立敦賀病院は「弁護士事務所からの督促状だと開封してくれる」として、08年度から弁護士事務所に回収作業を委託。公立病院ではないが、済生会病院では職員の労力を省くため、2カ月ごとに自動的に督促状を発行するシステムを開発した。
ある公立病院の関係者は「患者に支払い能力がないと分かっていても、医師法で診療を拒めないことになっている。医療関係者はジレンマに陥っている」と苦しい胸の内を明かした。【菅沼舞、高橋隆輔】
毎日新聞 2009年4月7日 地方版