「食の羅針盤」とも言われ権威あるミシュランガイド関西版の発刊が６日、発表された。東京に続き、料理店の“世界標準”の襲来に料理店や関係者の受け止めはさまざま。京都の老舗料亭は「京都の良さが分からはるの」と懐疑的。大阪では名物のお好み焼きやたこ焼きなどの大衆料理も調査対象と判明し、「ほんまかいな」とびっくり。関西３大都市の１つ、神戸は調査対象外となり、「なぜ神戸が…」とやや不満そうだ。
■余計な評価？
「世界的に権威のあるガイドに京都が取り上げられることは歓迎」と京都府の山田啓二知事。しかし評価を受ける老舗料亭などは困惑も広がっている。
京都市中京区の老舗料理旅館の専務は「結果は真摯（しんし）に受け止めたい」としたが、「海外で日本料理ブームがあるとはいえ、果たして京料理の良さが理解できるんやろか」と疑問を呈す。専務は「背景となる伝統文化を知った人が評価するなら分かるが、そうでない場合は京料理自体が世界を舞台に危機に陥る」と指摘する。
また、同市内の料亭の女将は「ただでさえ不景気で大変なのに、余計な評価でかき回さないでほしい。外国資本に日本の美意識を評価するのは無理」とばっさり。「流されず、粛々と店の味と風情を守っていくしかない」と批判的だ。
■コナモンも対象！？
ミシュランガイド総責任者のジャン＝リュック・ナレ氏はこの日の会見で、大阪庶民の食文化、お好み焼きや串（くし）カツなどについて、「私はそういう大衆的な料理は食べたことないが、あらゆるジャンルの料理が対象で調査はすでに行っている」と認めた。
これにお好み焼きの「鶴橋風月本店」（大阪市天王寺区）の上野喜憲店長は「業界でも前から調査員が来てるのではと噂（うわさ）になっていた。高級料理店しか取り上げないというイメージがあったので、お好み焼きが取り上げられるとすればうれしい」という。大阪で６店舗を展開する串カツ「だるま」の上山勝也代表も「下町の味がミシュランに受け入れらなら光栄」。大阪府の橋下徹知事は「食の都として大阪を売り出そうとしていた矢先に弾みがついた」と歓迎ムードだ。
■神戸は対象外？
今回は調査対象から、早くから港町としてさかえ、国際色豊かな神戸が外れた。ミシュラン側は「大阪は日本第２の都市で、京都は古くからの伝統で名前が知られている。神戸は今後検討する。ミシュランは日本で調査をはじめてまだ歴史が浅く、よちよち歩きだ」と説明した。
これに対し、創刊４８年の神戸のタウン誌「月刊ＫＯＢＥＣＣＯ」の編集顧問、小泉美喜子さんは「神戸のグルメは国際的で各国料理も充実していて、肩ひじをはらない軽やかさが持ち味。ミシュランに格付けされるような高級路線を目指すのではなく、『安い、おいしい、楽しい』という神戸のよさを突き詰めていけばいい」とし、「神戸っ子には神戸っ子のこだわりがある。他の人にどうこういわれたくないわね」と突き放した。
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