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救急情報提供のあり方でシンポ―厚労省研究班

3月23日12時55分配信 医療介護CBニュース


 2008年度厚生労働省科学特別研究事業の「救急患者受入れに係る連絡支援システムの開発のための基礎研究」研究班(主任研究者=有賀徹・昭和大医学部教授)は3月20日、東京都内で「救急医療機関情報提供のあり方に関するシンポジウム」を開いた。岐阜大高度救命救急センターの小倉真治氏が「救急患者の医療機関への受け入れを支援する情報活用」と題して基調講演、そのほか7人の救急医が登壇し、それぞれの立場から医療機関情報のあり方について発表した。

 小倉氏は基調講演で、「産科合併症以外の母体救命救急においては、一般救急医療や関連診療分野との連携が重要であるにもかかわらず、十分な体制が確保されているとは言い難い。全都道府県の半数では、周産期救急情報システムと救急医療情報システムがそれぞれ独立して運用されており、その場合、母児両方に適切な医療を提供できる受け入れ医療機関を円滑に選定できないことがある」などと現状の問題点を指摘。その上で、▽一般の救急医療情報システムの情報の更新とリアルタイム情報の提示▽救急隊と救急医療機関の間での、共有すべき情報の範囲、内容の共通化と標準化▽災害救急医療情報システムと連動した災害時の医療機関の受け入れ体制などについての情報の共有化▽地域の医療情報ネットワークとの連携―などが必要だと述べた。

 日本医科大付属病院高度救命救急センターの横田裕行氏は、08年4月から10月まで同センターに入院した内因性疾患697例のうち、3%が「救急隊は脳卒中だと判断しなかったが、脳卒中だった」、30%が「救急隊は脳卒中だと判断したが、脳卒中ではなかった」ことを挙げ、現状の体制では救急隊が正確に判断できていない実態を指摘した。その上で、04年に救急振興財団が作成した「救急搬送における重症度・緊急度判断基準」に加え、搬送前の脳卒中患者救護のための活動基準の一つである「PSLS」で、適切な判断をすることが大切だと強調した。

 湘南鎌倉総合病院救急総合診療科の太田凡氏は、救急搬送受け入れを保障するため、各都道府県が人口10万から20万人に1か所の比率で、「地域救急支援病院」(仮称)を新設することを提案した。「地域救急支援病院」のあり方について、▽救急隊からの患者収容依頼に対し、2件の医療機関から受け入れ困難の返答があった場合、軽症、重症を問わず、次は「ラストコール」として直近の「地域救急支援病院」が必ず収容する▽「ラストコール」の受け入れは、不十分な環境下での患者収容であることを全国民に周知徹底し、理解を求める▽「地域救急支援病院」は「ラストコール」の収容と院内トリアージ体制の整備を認可要件とする▽一定の基準をクリアした場合、患者の転床と転院は医療機関側が決定できるものとする―などを挙げた。

 埼玉医科大総合医療センター高度救命救急センターの森脇龍太郎氏は、埼玉県内の19の医師会へのアンケート結果について発表。同アンケート集計結果で、▽大半がネットワークの必要性を感じている▽大半が「ネットワーク構築は各医師会から始めて徐々に利用範囲を広げていくべき」と考えている▽小児救急は、成人救急以上に問題が山積している―などが分かったと述べた。また、県内39消防本部の救急隊員を対象にしたアンケートでは、▽半数以上の隊員が、急性心筋梗塞と脳血管障害の搬送で、ベッド満床、医師不在などで受け入れ先が決まるまで長時間を要した経験がある▽隊員の大半がネットワークの必要性を感じている▽ここ1年間で2割近くの隊員が、3軒以上の病院を回った経験がある▽ここ1年間で、6割以上の隊員が管外への搬送経験がある―などが分かったことを報告した。

 国立国際医療センター戸山病院緊急部の木村昭夫氏は、同病院に外傷で搬送された事例と転送例について報告した。木村氏によると、同病院では▽転送は全体の2%▽転送の62%は中等症▽転送の最多カテゴリーは外傷(28%)▽転送した外傷例の69%は中等症▽外傷の中でも整形外傷が65%▽整形外科領域の外傷でも、中高年の大腿骨頚部骨折や椎骨圧迫骨折など手術治療が必要だが、緊急度があまり高くない損傷が半数程度―だったという。それらを踏まえ、「救急搬送、転送の連携で最も重要なのは、2次救急医療機関の受け入れ情報を共有する支援システムの開発だ」「外傷患者については、2次救急医療機関の整形外科診療の受け入れ態勢に関する情報支援システムが望まれる」などと述べた。

 順天堂大医学部附属浦安病院救急診療科の山田至康氏は、小児救急医療について言及。「小児救急医療情報の提供については、一般治療だけでなく、救命救急と集中治療に関するものが必要だ。病院間の情報共有についてはコーディネーターの役割が重要」などと述べた。


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最終更新:3月23日12時55分

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