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社説:民主党 解散に向けてけじめ急げ

 このまま衆院選を乗り切れるとは到底、思えぬ。政治資金規正法違反で公設秘書が起訴された民主党の小沢一郎代表の続投方針をめぐり、党内で亀裂が深まっている。同党の混乱をよそに国会は与党ペースが強まり、09年度予算と関連法は27日、年度内に成立した。

 世論の推移を見極め進退を最終判断する考えを示唆する小沢氏は、同日の衆参各院議員との会合で、改めて続投に理解を求めた。退陣論がこれで収まるとは思えず、与党からは民主党の混乱に乗じたのか、「5月選挙」を念頭に置いた早期解散論も出ている。来る政権選択に備える意味からも、民主党は小沢氏が代表の座を退くことで、けじめを急ぐべきではないか。

 公設秘書の起訴を受けた記者会見で小沢氏は涙ながらに当面は続投する考えを表明した。だが、西松建設のダミー政治団体からの巨額の政治献金をどう認識していたのかなど、国民が納得できる説明はなかった。世論の批判が沈静化したとは思えず、党内で退陣論が公然化したことも、自然な推移だろう。

 だが、小沢氏が党所属議員への説明にのぞんだ会合で批判を展開したのは2議員にとどまった。小沢氏が「選挙の顔」にはふさわしくないと考える議員の多くが口をつぐんでしまったとすれば、情けない。それこそ党の体質が問われる。

 小沢氏自身「私が代表を続けることがプラスかマイナスか」と述べ、自らの続投が政権交代にどう作用するかを進退の基準としているはずだ。額面通りに受け止めるなら、自らの問題をめぐり党内で次期衆院選を危ぶむ見方が拡大している現実を直視すべきだ。

 小沢氏秘書が逮捕された3月3日を境に、国会の与野党攻防の景色は一変し、麻生内閣の支持率が沈む中で政権運営は小康状態を保っている。民主党が早期解散を掲げて攻勢に出るという構図が党首が直撃されたあおりで崩れ、与党から足元を見られたためだろう。

 反転攻勢の機運を察知した与党では、衆院解散時期をめぐる綱引きが再燃している。自民党の古賀誠選対委員長は「5月は緊張しなければならない」と述べ、追加経済対策となる09年度補正予算の今国会提出や、成立時期を視野に早期解散の可能性に言及した。

 これまで民意の審判をおびえ続けた与党だけに現金な変わりようではある。だが、政治の閉塞(へいそく)を打破するためには早期解散が不可欠という大状況は変わらない。麻生太郎首相は、追加経済対策の骨格を示したうえで、国民の審判を仰ぐことが筋である。

 それだけに民主党は一日も早く、衆院選を戦うにふさわしい態勢を整えねばならない。政権担当能力の中でも、危機管理は枢要だ。いたずらに解決を長引かせることは、その欠如を有権者に露呈しかねない。

毎日新聞 2009年3月28日 0時03分

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