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社説:小沢氏秘書起訴 与野党問わず徹底捜査せよ

 西松建設事件の捜査は今後、他の政治家側にも及ぶのだろうか。西松建設のダミーとされる政治団体は小沢一郎民主党代表の側以外にも、与野党の国会議員らに多額の献金をしていた。東京地検特捜部は徹底的に捜査し、不透明な「政治とカネ」の全容を明らかにすべきである。

 政治資金収支報告書などによると、西松建設のOBが代表を務めていた二つの政治団体は、ともに解散する06年までの3年間に、小沢氏や二階俊博経済産業相ら国会議員14人、自民党の5派閥、自治体首長5人の側に寄付やパーティー券購入で総額6360万円を提供している。また、最初に設立された95年から集計すれば、2政治団体からの提供額は4億7000万円を超え、巨額に上っている。

 政治資金規正法は企業から政治家側への献金を、政党や政党の政治資金団体を除いて一切禁止している。一方、政治団体からの献金であれば認められる。このため、西松建設はダミーとして作った政治団体を隠れみのに違法な企業献金を続け、小沢氏の公設第1秘書もそれを認識しながら報告書に虚偽の記載をした--というのが、特捜部が描く事件の核心だ。

 だとすれば、このダミー団体から他の政治家側に提供された分はすべて、同様に西松建設からの違法な企業献金に当たるはずである。そして政治家側も実際は企業献金だと認識していれば、小沢氏の秘書と同じように同法違反に問われる事態となる。献金額は小沢氏側が最も多いものの、違法かどうかの線引きは額の多少にかかわらない。献金を受けた政治家側を洗いざらい調べてもらわなければ国民の納得は得られない。

 政治家側への企業献金が禁じられているのは、特定の企業と政治家の癒着を封じることが狙いだ。報告書に虚偽の記載をしてまで企業献金が温存されているとすれば、公開される報告書を通じて国民が政治資金を監視する制度は根底から崩れてしまう。

 虚偽記載の罰則は禁固5年以下などで、国民にうそをつく重い犯罪だ。特捜部が報告書に「表のカネ」として記載された献金を立件したのも、その点を重視したからにほかならない。政治家の職務権限が限定され収賄罪の立件が難しくなる昨今、政治資金規正法違反で立件するケースが増えてきている流れもある。

 一方で今回の捜査には、総選挙が近づく中で選挙妨害になるのではないか、政権交代の可能性が強まる民主党の代表を意図的にターゲットにしたのではないか、などという疑問の声が国民の一部から聞かれるのも事実だ。

 そうした国民の疑念をぬぐい去るためにも、検察には節目節目で捜査の必要性を十分に説明してほしい。そして何よりも、政界にはびこる疑惑を徹底的に解明することだ。

毎日新聞 2009年3月25日 0時33分

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