民主党の小沢一郎代表は公設秘書逮捕から3日たった6日、記者団に再び事件について説明した。強気一辺倒だった発言は微妙に変化。代表の進退については「いずれ結論が出てからのこと」と含みを持たせた。動揺する党内向けに「説明責任」を果たす一方で、着々と進む検察当局の「小沢包囲網」に「弱気になっているのでは」との指摘も出ている。(5面に小沢氏とのやり取り要旨)
「東北地方の建設業者は自民党でガチガチだ。民主党が口を利ける状況ではない」
6日午前、党本部に姿を現した小沢氏は、「激励」に訪れた石井一副代表に対し、一部で報道されている汚職などへの関与はあり得ないと訴えた。
会談直後、小沢氏は突然記者団に近寄り、質問に応じた。記者会見室の外では初めて。普段は記者から声を掛けられても振り向かない小沢氏が、この日は笑顔さえ見せた。
「犯罪的な行為は一切やっていない。現段階で自分の進退については一切考えておりません」。代表辞任を改めて否定したが、「いずれ、きちんと結論が出てからのことだと思っております」と言葉を継ぎ、進退問題に発展する可能性を初めて示唆した。
4日の記者会見では「遠からず大久保(隆規容疑者)の嫌疑は晴れる。起訴されることなどない」と断言したが、この日は「個別のことは秘書を信頼して任せている。個々の献金については分かりません」と微妙に軌道修正した。
事件を巡っては、西松建設OBの政治団体が小沢氏側への献金の隠れみのにされていたことなど、違法献金の手口に関する報道が相次いでいる。自民党田中、竹下派所属時代に師事した故金丸信元自民党副総裁から引き継いだ西松建設との結び付きが白日の下にさらされた。
3月6日は16年前の93年、金丸氏が巨額の脱税容疑で逮捕された日。金丸氏の逮捕を「検察の裁量権の拡大」と批判した小沢氏は、4日の記者会見でも「(検察は)不公正な国家権力」とののしった。
しかし、6日の記者団とのやり取りでは検察批判をトーンダウン。検察による「小沢包囲網」が着々と築かれていることを察してか、「言葉遣いがまずかったなら、いくらでも訂正する」と反省の弁を口にするなど弱気ものぞかせた。さらに「地検であろうがその他の方であろうが、可能な限り話し合いはいつでもする」と述べ、検察当局への低姿勢を強調してみせた。
一方、民主党内の空気は、疑惑が深まるにつれ冷ややかなものへと変わっている。「代表と行動を共にする」と言っていた鳩山由紀夫幹事長らも距離を置きつつあり、「小沢氏の代表辞任はいずれ避けられない」というのが党内の共通認識になってきている。
「世代交代」で岡田克也副代表か、「緊急代行」で菅直人代表代行か鳩山氏か--。「ポスト小沢」に向けたシナリオが、まことしやかにささやかれ始めた。【渡辺創、小山由宇】
毎日新聞 2009年3月7日 東京朝刊