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急変:ダミー献金事件 民主、危うい「結束」 検察と対決、一蓮托生に不安

 政府・与党の迷走につぐ迷走で、政権奪取近しと思われていた民主党を、小沢一郎代表の公設秘書逮捕という衝撃が襲った。だが、「小沢氏辞任-党内大混乱」という事態を恐れてか「小沢辞任論」は一部でささやかれる程度。表面上は奇妙なほど静まり返っているが、検察批判を先鋭化させる小沢氏との「一蓮托生(いちれんたくしょう)」への強い不安を指摘する声も上がる。【田中成之】

 「代表が(記者会見で)きちんと説明して、明確に容疑を否定した。我々はそれを信じて行動していく。大事なことは右往左往せずに前に進むことだ」

 4日午後、国会内。「ポスト小沢」の最有力候補と目される岡田克也副代表は記者団に対し、小沢氏を支える姿勢を明確にした。「『小沢氏が辞め、岡田氏に代わった方がいい』という意見もある」と水を向けられたが「そんなバカなことを言っているのは、僕には信じ難いことだ」と取り合わなかった。

 定額給付金の財源確保法を再可決した衆院本会議の終了後、テレビカメラの前で話した民主党議員は一様に小沢氏を擁護し、明確に辞任を求める議員は皆無。これに先立つ党の参院議員総会と衆院の代議士会でも、小沢氏の主張を説明する幹部に対し、出席議員から質問やヤジは一切出なかった。中堅議員は「本人が『問題ない』と言う以上、党内はこれで収まらざるを得ない」と指摘する。

 「ポスト小沢」をにらんだ議員同士の会合も「『党内政局に備えている』と誤解を招く」と自粛傾向だ。仙谷由人氏や枝野幸男氏ら小沢氏に批判的な議員が多い党内グループ「凌雲会」は、3日夜に予定していた会合を急きょ中止。菅直人代表代行のグループも5日昼の定例会を取りやめた。若手は「集まっても結局『様子見』しかない」と明かす。

 いずれにせよ、小沢氏が往年の自民党最大派閥、竹下派の会長代行だったころ、派内に鉄の統制を敷き、自らへの反発を抑え込もうとしたのとよく似た現象とも言える。

 しかし、一皮むけば党内は不安にさいなまれている。検察との全面対決に踏み切った小沢氏に党全体が巻き込まれるという懸念だ。激しい検察批判を繰り返した小沢氏に鳩山由紀夫幹事長ら執行部は現時点では同調する姿勢を見せているが、小沢氏に距離を置く党内グループからは鳩山氏らへの批判も出始めている。ある議員は「事件が拡大したら執行部が小沢氏に進退の決断を迫るのが筋。発言は控えるべきだ」と語った。

 小沢氏と距離を置く中堅議員が「検察が次々に証拠を出してくれば小沢氏は持たない」との見通しを語れば、「ポスト小沢」を巡って動向が注目される複数の代表経験者周辺では「(代表選に向けた)頭の体操はもう始めている」と打ち明ける。今の「小沢代表の下で一致結束」状態は、「嵐の前の静けさ」のようにも見える。

毎日新聞 2009年3月5日 東京朝刊

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