ここから本文エリア 救急医療の危機 露呈2009年03月31日 ■6病院搬送不能 ◇生駒市消防本部「7つ目、早い方」 生駒市内で意識を失い倒れた新聞販売所従業員の男性(63)が生駒、奈良両市の六つの病院・医療機関に受け入れを断られ、約1時間後に大阪府内の病院に搬送後、死亡した問題は、県内の救急医療態勢のもろさを改めて浮き彫りにした。市消防本部は「七つ目で搬送先が見つかるのはまだ早い方。それ以上照会することも月に数件はある」と明かす。(下司佳代子、高橋友佳理) 21日午後、救急隊員は通報を受け、7分後に市北部の新聞販売所に到着。すぐに重篤な救急患者を受け入れる救命救急センターを備えた近大奈良病院(生駒市)に電話。救急専門医の指示で、心臓の除細動や気道確保を行った。同病院には当直の医師が2人いたが、入院患者の処置で手が離せず、近くの2次救急病院に搬送するように指示されたという。 この日、生駒市の2次救急の当番病院は白庭病院だった。新聞販売所からは北に1キロ足らず。だが、病院側は「土曜日で当直医が1人しかおらず、十分な設備もない。最初から(重篤な救急患者を受け入れる)3次救急で診てもらった方がいいと判断した」。 近大病院と並ぶ救急医療の拠点、県立奈良病院救命救急センター(奈良市)も「研修医を含む4人が当直中でベッドは1床空いていたが、直前に脳内出血で救急搬送され、手術した患者の経過が悪く、処置に追われていた」と説明する。 男性を最後に受け入れたのは、大阪府大東市の野崎徳洲会病院だった。市が計画中の公設民営の市立病院で指定管理者に内定している医療法人徳洲会が経営している。同法人は「年中無休」「24時間」、救急患者を受け入れることで知られる。 市消防本部は「一般的に心肺停止に陥った場合、できるだけ近い病院で蘇生措置をした方がいい。それで心拍が再開した例もある」と言う。今回のように地元の病院が搬送を受け入れず、医療圏を越えて野崎徳洲会病院に搬送することは過去にもあったという。 消防庁のまとめでは、08年の県内の重症患者の救急搬送で、受け入れ先が見つかるまでに4回以上照会したケースは530件と全体の12・5%を占め、割合は全国でワースト1。11回以上は50件(1・2%)あった。最大照会回数は23回だった。搬送先が見つかるまでに30分以上かかった件数も344件と、8・4%を占める。 ◇「医師不足が影響」救命救急センター24時間体制作りへ 県の武末文男・地域医療連携課長は30日、記者会見し、救命救急センターを備えた県立奈良病院と近大奈良病院が受け入れを断ったことが最大の問題と指摘した。そのうえで「医師不足が影響している」として、今後、救命救急センターで常時重篤な救急患者を受け入れることができる態勢作りを進める考えを示した。 武末課長によると、県立医大病院(橿原市)を含め3カ所の救命救急センターはそれぞれ研修医を含め医師約10人態勢だが、24時間体制で救急患者を受け入れるには30人態勢にする必要があるとした。 また、消防隊員が2次輪番病院にも照会し受け入れを断られたことについて、武末課長は「2次病院に問い合わせても受け入れは難しい。患者の症状に合わせた照会の規則を作らないといけない」。今月可決された改正消防法は、都道府県に容体に応じた医療機関リストを作成し搬送先を選ぶルール作りを義務づけている。病院搬送に約1時間かかったことは「救急搬送にかかる時間の全国平均は33分。著しく長くかかったとは思わないが、平均より長いのは事実」とした。現場の消防隊員が患者の蘇生をしながら搬送先を探すのは負担が大きいとして、救命救急センターか消防本部が司令塔として照会を担う新たなシステム作りを検討するという。31日午後2時から医大病院で救命救急センターや消防、県の担当者が集まり検討会議を開く。 × × × ◎21日の救急搬送の経過(県調べ) 午後1時42分 男性が倒れ、同僚が119番通報
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