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2007年5月2日発行版
 
秘密組織「別働隊」が浮上
 

2児連れ去り事件  木下容疑者裏の顔

 北海道出身の主婦、渡辺秀子さんの2児が拉致された疑いのある事件で、国際手配を受けている木下陽子容疑者(59)は、北朝鮮工作組織の幹部であることが、統一日報の取材でわかった。この組織は、北朝鮮労働党統一戦線部在日工作組織の「別働隊」と呼ばれている。木下容疑者の外国人登録名は洪寿恵。七七年以降に日本国籍を取得したと見られている。日本生まれの2世として総連活動に参加していた。洪寿恵容疑者の足跡から、北朝鮮の対南工作活動の一端が垣間見える。
(社会部・金総宰)


在日工作組織で暗躍

 洪寿恵容疑者は、1947年、中部地方の在日朝鮮人の比較的多く住む場所で生まれた。高校を出たあと東京のある有名大学に進学、英文科を卒業した。奨学金を受けながら在日朝鮮人学生の親睦組織「在日本朝鮮人留学生同盟」(留学同)に参加。「頭がいい」と評判を受け、朝鮮総連幹部の女性若手活動家候補に抜擢された。
 洪容疑者は、金炳植総連第一副議長(当時)が東京に設立した貿易会社ユニバーストレイディングの役員だった。
 同社は渡辺秀子さんの夫、高大基さんが金第一副議長の腹心として働いていた会社だ(78年解散)。
 総連で活動経験のある元幹部によると、洪容疑者は当時、総連とは直接関連のない北朝鮮労働党の統一戦線部ラインで仕事していた。総連内部で「別働隊」と呼ばれた組織だ。
 この秘密組織は外部からは別名「ふくろう部隊」として知られ、幹部の護衛と監視、主体思想の宣伝、対南工作、在日韓国人に対する工作などの任務を帯びていたという。ふくろう部隊は1968年頃、北朝鮮の方針に従ってつくられた。金炳植氏が在日側の責任者だったようだ。 
 洪容疑者は、「別働隊」所属だったが、ユニバーサル社そのものが、組織の拠点のひとつだった。総連内でも最も秘密めいた組織であったようだ。
 現役の活動家たちはおおむね、「金炳植は北の労働党の方針に従って統一戦線まがいのことをやろうとした」と見ているが、ほかにも任務があったはずだと話す元総連関係者もいる。拉致による対南工作もそのひとつだった。
 責任者であった金炳植氏は、建前上「大衆団体」の総連に、政治工作組織の活動を持ち込みすぎたことが原因で、一般活動家たちの反感を買い、結局、72年10月、平壌に召還された。その過程で同氏が北朝鮮の統一戦線部の指導を受けていたことが明らかになったといわれる。
 渡辺さんの夫の高さんは金炳植氏の信任を厚くした一人で、行方不明となった73年6月、北朝鮮に密航したと見られる。目的は平壌で査問を受ける金炳植氏を弁明することにあったといわれている。洪容疑者は、高さんが居なくなった後、責任者の地位に就いたのではないかと、元活動家たちは見ている。
 「洪は才覚を認められ、22、23の頃北へ渡り、工作活動の訓練を受けたにちがいない。おそらく総連にも顔を出したことはないはず」
 洪容疑者はその後の足取りを知る人はほとんどいない。69年頃、総連のどこかに配属されたことは確かで、なんらかの抜擢を受けたのではないかと元活動家たちは話している。
 本国に呼ばれた高大基さんの事情を渡辺さんは知らされておらず、夫の行方を探している間に殺害されたもよう。

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