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社説:小沢氏秘書起訴 代表続投は説得力に欠ける

 西松建設の巨額献金事件で東京地検特捜部は24日、小沢一郎民主党代表の公設第1秘書らを政治資金規正法違反罪で起訴した。これに対し小沢氏は代表続投を表明し、党側も了承した。

 総選挙を間近に控えた時期の事件は小沢氏をねらい撃ちした「冤罪(えんざい)」だと言いたいのか。同夜、記者会見した小沢氏は「私自身が犯罪を犯したような印象で悔しく、無念の思いをしながら耐えてきた」と語った。

 だが、これから自民党に代わって政権をねらう民主党の対応として、これで有権者は納得するだろうか。やはり疑問が残る。

 起訴内容について小沢氏も秘書も西松建設からの企業献金だったという認識はなく、政治資金収支報告書の虚偽記載に当たらないと一貫して否定し、公共事業に絡む贈収賄や口利きなどの違法行為も一切なかったと主張している。今後、これらを小沢氏側が裁判で争うことに異論はない。

 しかし、政治家の責任はそれで済むとは思わない。少なくとも西松側は小沢氏の地元のダム工事などの受注に際し何らかの期待があって献金したと供述している。便宜供与の有無はともかく公共事業に絡んでカネが動いたのは確かだろう。

 利権をめぐりカネと票が動く。これこそ政官業の癒着の本質であり、古い自民党の族政治そのものの構図ではないのか。しかも小沢氏はそんな自民党政治の打破を掲げて離党し、政権交代可能な2大政党制の実現を目指してきたはずだ。

 次の衆院選で首相をねらう民主党の代表が「古い自民党の体質そのままだ」と多くの有権者を失望させた責任は免れまい。小沢氏は突然、企業・団体献金の全面禁止にも言及しているがそもそも、これまでなぜゼネコンから巨額な献金を受け続けてきたのか。小沢氏は会見で「隠しているわけでない」などと語るだけで疑問に直接答えなかった。

 民主党内ではあっせん利得罪など政治資金規正法違反以外の容疑が出てこなかったことで続投を容認する声が大勢になったという。党としても、規正法違反は単なる形式犯で、政治資金収支報告書の記載の仕方の問題というのだろうか。もし、そう受け止めているのなら、「政治とカネ」の問題で従来、有権者がどれだけ不信感を抱いてきたか認識が不足している。

 小沢氏は会見で、政権交代の実現が最大の目標だとも再度語った。しかし、世論調査を見ても政権交代への有権者の期待はうせてはいないものの民主党の支持率は下がっている。何より深刻なのは与野党問わず政治への不信が再び拡大していることだ。

 進退問題はなおくすぶりそうだが、自民党と違う姿を示すのが民主党の原点だ。政権交代実現のために小沢氏が辞任して早くけじめをつけた方がいいとは考えられないのだろうか。

毎日新聞 2009年3月25日 0時40分

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