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“面従腹背”強めるチベット 大量宣伝と治安部隊で押さえ込み (2/2ページ)
大量の宣伝工作から透けてみえるのは、チベット社会は伝統的に「政教合一社会」であり、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世が掲げる「高度の自治」を認めれば、「想像を超える政治的結社を生み出す可能性がある」という政府当局の懸念だ。
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「誰も政府の宣伝なんか信じていない。今後は、宗教の根幹にかかわる活仏の選定が重大な分岐点になるはず」
四川省のチベット族僧侶は、当局が、転生する菩薩の化身を活仏とする宗教観に「干渉」していることに強く反発した。
政府は、活仏の選定で中央政府の認可を強化した「活仏転世管理弁法」を07年9月に施行、14世による活仏選定を法的に認められないとした。しかし14世は中国国内で転生しないと明言している。今後、対立の火種となるのは必至だ。
チベット族にとり、チベット仏教の最高位「ダライ・ラマ」が尊敬の対象だ。
14世が死去すれば独立派に対する歯止めが利かなくなる可能性がある一方、世界的に知られる14世の存在が消えることで当局は、「国際化したチベット問題を国内問題として処理、解決できる」(中国筋)と考えているふしがある。
だからこそ、四川省のチベット族居住区で「読経」が禁止されるなど宗教統制が強化され、「(14世の)写真を持っていただけで警官に殴られた」(僧侶)といった現実が生まれる。
政府が対チベット政策で強調するのは、経済発展のメリットだ。中央政府が今年、チベット自治区に投入した予算額は昨年の2倍の240億元(1元約14円)にのぼる。経済・軍事大国化に向けた「中華民族の復興」の波にかき消されかねない様相だ。