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時代は“公選法2.0”を求めている小林温・参院議員(自民党)に聞く -ネット選挙運動を即刻解禁せよ! 第9回-吉川 忠行(2007-07-11 13:12)
前回はオーマイニュースが国会議員を対象に行ったネット選挙に関するアンケート調査の結果を掲載した。調査の回答率は全体で6.13%だったが、ネット選挙解禁に関する国会議員のナマの声が聞かれた。
今回は自民党で「選挙制度調査会インターネットを使った選挙運動に関するワーキングチーム」の座長を務める小林温参院議員に、与党側から見たネット選挙の実情を聞いた。パソコン歴は20年以上で、パソコン通信時代からネットを使っているベテランユーザー。小林議員の眼には、公職選挙法やネット選挙を取り巻く状況はどう映っているのか。民主党(第7回)と何が違うのか。(動画はこちら) 公示前日までにどれだけ中身を濃くできるか ── 現在の公選法では選挙期間中のホームページ(HP)の更新やメール配信が行えないが、どのような対応をしているか。 「公選法を守らなければならないから、前日まで更新して当日の午前0時からは触れないわけです。HPの作り込みも、前日までにどれだけ中身を濃くできるかを念頭に更新しています。リニューアルも最近終えました」 ── リニューアルではどのような点に力を入れたのか。 「従来は国会や選挙区での活動報告を時系列で並べていました。これを整理して、政策がどういう形で法律になったか、自分がやりたい政策のビジョンを打ち出しています。初めてHPを訪れた人にも、自分の人となりと活動がわかるように意識しました。調査期間も含めると半年ほどかけてリニューアルを行いました」 ネットに理解のない議員の誤解も含んだ“恐れ” ── 先日のアンケートでは、自民党の議員からもネット選挙について「解禁すべき」という声があった。なぜ自民党からはネット選挙解禁の法案が出ないのか。 「2つあって、1つは公選法全体を現代化する中で、今のコミュニケーションの主要なツールとなっている、ネット利用のルールをどうするかを考えなければならないです。 「公選法全体を見直さないと、整合性のない法律になってしまう」と語る自民党の小林温・参院議員=6月19日、東京・永田町で(撮影:吉川忠行) 印刷して(ポスターなどを)100万枚でも200万枚でも配れる人と、そうでない人で差が出てはいけないということで、枚数制限があるわけです。その一部として、HPやメールは規定されているので、今の法律では使っちゃいけないことになっているんです。 今までは、紙の媒体で見られる人と、見られない人で差が出ないように、不公平感がないようにということでした。仮に、紙媒体は制限されているのにもかかわらず、ネットを全面的に解禁すると、デジタル・デバイドがおきて(ネットにアクセスできない人は)候補者情報に触れられない可能性もあるんです。HPやメールの利用も認めるとなると、公選法全体を見直さないと、逆に整合性のない法律になってしまうと強く感じています」 「もう一つは、『インターネットってなに?』『HPってどういう意味があるの?』『メールってどういうことなの?』という、あまり理解のない議員の方もいます。そういう方の話を聞くと、自分よりも相手候補がウェブの更新を頻繁にしていたり、インターネットをコミュニケーションのツールとして活用していると、(ネット選挙が)解禁された時点で、自分が不利になるという、若干誤解も含んだ“恐れ”もあるんですね。 そういう方には、インターネットで候補者情報を得よう思った有権者は、HPを持っている人と、持っていない人で判断することや、仮に両候補とも持っていたとして、どのくらい頻繁に更新しているか、書いてある政策や人柄がどれだけ感じられるかで比較をされると思います、と説明しています。 政治に興味のある人は、いろいろな手段を使って候補者の情報を得ようとしています。HPも含めてインターネット上で情報提供をしていないことは、期間中に更新をする、しないにかかわらず、もうすでに判断材料になってしまっているんですから、ネット選挙解禁は別問題ですよ、と申し上げていますが、なかなか理解されないですね。 候補者、現職議員も含めて、インターネットというものが、どういうツールで、どう有効活用すると、どういう効果が生まれるのかを、もう少し理解を深めてもらいたいと思います」 “解禁”よりも“新しいルール作り”を ── 「なりすまし」対策を理由にしたメール解禁慎重論があるが、迷惑メールなどが解禁の足かせになっているのか? 「インターネットを使う、使わないにかかわらず、我々政治家はいろいろなところで誹謗中傷の被害に遭っています。選挙期間という短い期間では、誹謗中傷のメールを送られたり、掲示板に載せられても、名誉回復する時間がないんですね。選挙が終わったあとに『あれは誹謗中傷だった』とわかっても選挙結果に影響しないので、慎重にやらなければいけないと思うんです。 今の時点でいえば、公選法を無視して誹謗中傷のメールを送ることもできるし、勝手にHPを立ち上げて、ある候補者を攻撃するようなHPや掲示板の運営もできる。プロバイダ責任法で削除命令も出せますが、時間差をどう考えるかということでは議論しなければならない。 当然解禁した方が良いが、“解禁”よりも“新しい時代のルール作り”をしていくべきです」 固定電話がなくて新聞を取っていない人は想定外の公選法 ── ネットユーザーへのアプローチはどうしているか。 「ネットユーザーにはアプローチしづらい、というか手段すらないんです。新聞を自宅で取らず、固定電話を持たずに携帯電話しか持たない、インターネットでニュースを仕入れるというライフスタイルの若者が増えていると思います。 公選法で認められている数少ない選挙運動の中で、電話は無制限ですが、我々のところにあがってくる名簿の電話番号はほとんど固定電話ですね。固定電話を持っていない人には電話すらかけられないんです。選挙公報はかつては自治会が配っていましたが、自治会機能がなくなっている都市部では、新聞折り込みになっています。新聞を取っていない人には入っていかない。選挙期間中に、国が費用を出してくれて選挙広告を新聞に何回か載せられるんですが、それも新聞を取ってない人は見られないですね。 今の公選法で認められている手段というのは、新しいライフスタイルの若者には対応していないので、彼らにどうアクセスするのかは、うまくピンポイントで当たらないのが現状。インターネットや携帯電話は処方箋になると思います」 公選法改正は議員立法で ── 超党派でネット選挙解禁に向けた取り組みはできないのか? 「党の内外で話をしています。選挙が近くなると、なかなか選挙にかかわる法律改正は難しいんです。参院選が終わってすぐにでも、インターネット利用を含めた公選法の現代化に、超党派で取り組もうという話をしています。 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や携帯電話、「YouTube」の動画配信など、情報技術がどんどん進化しているので、いま公選法改正で議論しているHPの更新やメールの解禁という話より先の話題がいっぱいあります。そういったもの全体を射程に入れた法律を作っていかないと、またすぐに改正作業をしなければならないということになるんで、それぞれの政党で最先端の情報技術に理解のある人たちと議論していきたいです。 できれば、超党派で協議会を作って議論した結果を、議員立法で共同提案をさせていただくのが、一番良いのではないかと思います」 ── ありがとうございました。 ◇ ◇ ◇ ネット選挙について、「解禁よりも新しい時代のルール作りが大切」と語り、公選法の現代化には超党派で取り組みたいという小林議員。 「ネットで署名を集めて総務省に訴える人が出てきてもいいのでは」と、ネットユーザー側の立ち上がりにも期待を寄せていた。オーマイニュースでは、参院選公示後も「ネット選挙解禁」を訴え続けていく。 もうネット抜きでは成立しない世の中。ネット選挙の“抵抗勢力”には、「不勉強な議員は淘汰されかねないことを自戒」という現職議員(68)の言葉を贈りたい。 【関連リンク】 小林ゆたか公式ホームページ ネット選挙運動を即刻解禁せよ! トップページへ バックナンバー
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