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ネット選挙運動を即刻解禁せよ!

「ネットが使えないのは前時代的」国会議員も嘆く公選法

衆参両院議員全員アンケート結果報告 -ネット選挙運動を即刻解禁せよ! 第8回-

吉川 忠行(2007-07-06 12:50)
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 12日公示の参院選。特集「ネット選挙運動を即刻解禁せよ!」では、選挙期間中にウェブサイトの更新などができない現行の公職選挙法の問題点(第3回)や、過去に公選法ギリギリのグレーゾーンで戦いを挑んだ選挙の事例(第4回)などを紹介してきたが、いまだネット選挙が解禁される気配はない。

 今回は6月1日から25日にかけて、オーマイニュースが現職の国会議員を対象に実施した、ネット選挙に関するアンケート調査の結果を報告する。送付数は参院240人、衆院478人で計718人。回答者数は参院20人(自民6、民主8、共産4、社民2)、衆院24人(自民8、民主12、共産2、社民2)で、計44人。回答率は参院8.33%、衆院5.02%で、全体では6.13%だった。
 はたして、現職の国会議員はネット選挙をどう思っているのか。

参院選前の解禁賛成は44人中40人

 アンケートの設問は「今年の参院選前のネット選挙解禁に賛成か」で、回答の選択肢は以下の6つ。

1.ウェブサイトの解禁だけなら賛成
2.メールの解禁だけなら賛成
3.両方同時解禁なら賛成
4.どのような形でも解禁に賛成
5.どちらの解禁にも反対
6.その他(上記5つに該当しなかったものを集計時点で分類)

 もっとも多かった回答は「どのような形でも解禁に賛成」の24人(参12、衆12)。次いで多かったものは「ウェブサイトのみ解禁」の12人(参6、衆6)で、「ウェブサイトとメールの同時解禁に賛成」の2人(参1、衆1)と「その他(条件付き賛成)」を合わせると、ネット選挙自体に対する賛成者数は、44人中40人となった。

 「どのような形でも解禁に賛成」する意見としては、「多くの人にとってインターネットは主要な情報収集のツールとなっており、自宅でじっくり各候補者の政策を吟味できる」(松井孝治参院議員・民主)、「すでにインターネットは社会の公器」(亀井善太郎衆院議員・自民)、「投票率の低い若年層の政治に対する関心を引き起こす」(ツルネン マルテイ参院議員・民主)と、ネット利用者の増加に伴い、政策判断の道具として有効に機能する点を挙げる議員が目立った。井上哲士参院議員(共産)は「日本の選挙は『あれはやってはいけない』の“べからず主義”。政党や候補者が自由に政策を訴え、有権者が情報を得て自由な判断で投票することが民主主義の発展に欠かせない」と、現在の“原則禁止”の公選法や選挙制度を問題視した。

 「ウェブサイトのみ解禁」と回答した篠田陽介衆院議員(自民)も「期間中にウェブサイトで情報発信ができないのは前時代的」と、現状に則さない公選法に疑問を投げかけた。メールについては「まずはウェブサイトを解禁し、その後メールについて議論すべき」。

 「早急に問題点を整理して(ネット選挙を)解禁すべき」との立場の渕上貞雄参院議員(社民)は、メールの問題点として、「ウェブサイトと異なり、有権者へ一方的にメールが送られてくる可能性がある」と指摘する。「まずはウェブサイトの解禁から段階的に実施していくべき」と、比較的解禁のハードルの低いウェブサイトから実施し、メール解禁のルール作りを検討すべきとの意見だ。

 一方、「どちらの解禁にも反対」は4人(参1、衆3)だった。ネット選挙解禁の趣旨には賛同できても、「参院選前の解禁」という時期については、「議論が不十分」、「日程的に難しい」などの意見が見られた。2000年ごろから選挙のたびに話題にのぼる割には、議論が進展していなかったことがうかがい知れた。このままでは、参院選後もまた同じことが繰り返されはしないか?

参院選後の議論はウェブサイトとメールだけで大丈夫?

 今回の参院選でのネット選挙解禁については「議論が不十分」などの意見が見られたが、参院選後の解禁についてはどうか。回答の選択肢は参院選前の解禁を問う設問と同じ6つ。

 結果は参院選前と同様に「どのような形でも解禁に賛成」が最多で、28人(参15、衆13)だった。次いで「ウェブサイトのみ解禁」の6人(参2、衆4)。「ウェブサイトとメールの同時解禁に賛成」と「その他(条件付き賛成)」を加えると、賛成者数は44人中43人で、「どちらの解禁にも反対」は1人(参0、衆1)だった。

 「どのような形でも解禁に賛成」の理由は、参院選前と同様、ネット利用者数の増加により、多くの有権者にとって解禁のメリットが多いという理由だった。同時に「年代別の格差や地域間格差が新たな『情報収集力』の格差を生む心配もある」(西岡武夫参院議員・民主)など、ネットを使わない、使えない人たちへの配慮の必要性を説く声も見られた。

 また、「お金をかけずに多くの情報を有権者に提供でき、戸別訪問などに比べて買収など公正な選挙を阻害する恐れがない」(高井美穂衆院議員・民主)、「選挙資金の軽減と情報開示」(喜納昌吉参院議員・民主)といった、コスト面で従来型の選挙運動よりも安く抑えられることを指摘する議員も多く、ネットを活用すれば選挙資金が潤沢な陣営にも対抗できる可能性に期待を寄せているようだ。

 ネット選挙というと、最近では動画共有サイト「YouTube」にアップロードされた政見放送をどうするかなど、2005年の衆院選(郵政解散選挙)当時にはみられなかった問題も出てきている。ウェブサイトやメールといった既存のものだけを対象とした議論ではなく、「今後利用される様々なサービスの特性に応じた規制のあり方を柔軟に検討すべき」(柴山昌彦衆院議員・自民)と、その場しのぎの解禁にならないよう、議論のあり方を提起する意見もあった。

 唯一反対意見だった民主党の衆院議員(秘書が代理回答したため匿名にしてほしいと要請あり)は、自身でウェブサイトを運営し、メールで活動報告も行っており、ネット利用には肯定的だ。しかし、選挙期間中にネットを使用できるようにした場合、資金力の差やウェブサイトへの攻撃、メールのなりすましなどの問題が考えられる現状で、公正な選挙運動が行えるのかが疑問だという。

キレイなサイトにはトゲがある?

 ネット選挙により、資金力にかかわらず選挙運動が行えるとみる議員がいる一方で、ある現職衆院議員(自民)は「ウェブサイトの作り方、きれいさなどで優劣が判断されることが予想され、本当に意義のある候補者が選ばれるのか」と、ウェブサイトの見た目だけで議員の善し悪しまで判断されかねない危険性を示した。つまり、ここでも資金力の差が影響しかねないと言うことだ。

アンケート結果ではネット選挙解禁に賛成の声は多かったが、参院選までの解禁実現となると…(撮影:吉川忠行)
 「ウェブサイトのみ解禁」と回答した同議員は、メールについて「受け取ったメールの返事は、時間的に結局取り巻き(秘書やスタッフ)が書かざるを得ず、真に候補者の意見や考えを表すことにならない可能性もあるのでは」と、議員の多忙さから「ネット選挙解禁=有権者との双方向コミュニケーションの向上」とはならない実情を寄せた。

 自民党選挙制度調査会のネット選挙運動に関するワーキングチームの座長を務める、小林温参院議員(自民)の回答も「ウェブサイトのみ解禁」だ。電子メール解禁時の問題点を「なりすましや誹謗中傷がなされても、候補者の損害を選挙期間中という短期間に回復させることが現実的に不可能で『やり得』になりかねない」と指摘する。

 また、「メールアドレスの売買にもつながり、お金のかかる選挙になる可能性も」と、綿密なルール作りを行わずにメールを解禁した場合に、従来の名簿売買のネット選挙版とも言える新たな「政治とカネ」の問題になりかねない点を警告した。

 今回の調査結果では、解禁賛成派の議員からの回答が多かったこともあるが、与野党を問わず日本でもネット選挙を解禁すべきとの結果だった。伊達忠一参院議員(自民)は、これからの議員のネットへの接し方についてこう語った。

「ITが分からないではすまない世の中になっており、不勉強な議員は淘汰されかねないということを自戒するつもりでいます」

  ◇ ◇ ◇

 残念ながら、今回のアンケートで、公選法のグレーゾーンに攻め込んで「参院選でネット選挙をやります!」という議員も、「参院選までにネット選挙解禁を実現します」という議員もいなかった。いまどき事務所に飾る「ちょうちん」はオッケーで、ネットがダメな公選法。一体いつになったら解禁されるのか。

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