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ネット選挙運動を即刻解禁せよ!

「ネチズンはネット解禁運動をせよ」

鈴木寛・参院議員(民主党)に聞く -ネット選挙運動を即刻解禁せよ! 第7回-

藤倉 善郎(2007-06-28 12:45)
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 これまで民主党は4回にわたってネット選挙運動解禁のための公職選挙法改正案を国会に提出している。昨年6月に提出した民主党法案は自民党・公明党の審議拒否にあい、いまだ、ネット選挙解禁は実現していない。

 鈴木寛議員は、その民主党でインターネット選挙活動調査会会長を務める。先日、「センカンドライフ」内に開設した事務所で、サイバー演説会も実施したバリバリのネットユーザー。その鈴木議員に、ネット解禁をめぐる現状を聞いた。(動画はこちら

解禁どころか、規制が厳しくなっている?

── 日本の公職選挙法は、「原則禁止」であるがゆえにネットでの選挙運動もできないと(連載第1回参照)。

「解禁されていないのは日本くらいでしょう。もともと海外では選挙活動は"原則自由"で、禁止行為が法律で定められています。だから、新しい技術やサービスが普及してきたときにも、大規模な法改正が必要ない。ネットやブログが普及すれば、自動的に選挙運動でも使われる」

── しかし日本では、ブログの更新ができないと。

「そうです。これもおかしな話で、2005年3月の補欠選挙までは、候補者HPはダメでしたが、民主党のホームページ(HP)であれば、表現に注意しさえすれば、書き換えるのはOKだったんです。誰もおとがめなしだった。ところが2005年9月に行われた総選挙の公示の初日に、従来と同じように党HPを更新したところ、自民党から総務省に通報。総務省から『やめろ』と指示が出て、政党のHPすら更新できないという、解禁どころか逆行する形になってしまいました」

── ネット上での第三者による応援もできないんでしょうか。

「それも法律上はダメです。要するに、候補者名を記述して何かするというのがダメ。落選運動もダメ。公選法の運用ってものすごくおかしくて、それまで大丈夫だったものがあるとき突然、当局の一方的な解釈変更で摘発される」

── 第三者の応援ブログは報道とはみなされない?

「みなされないでしょうね。前回の選挙中にある大手のネット放送局が似たようなことをやろうとしましたが、総務省に確認したらそれはダメだと言われたために見送った。ネット放送局ですらダメなら、個人のブログが報道とみなされるのは難しいでしょう。自民党を支持するブログだったらわかりませんが」

── 座談会や討論会もダメ?

「ダメですね。ただ、候補者が出ずに党幹部などが出るならいい。本当におかしな話です。有権者がネットで政治や候補者・政党に関する情報を得ようとする行動が、いちばん盛り上がるのは選挙直前の1週間なのに、その1週間、ネットでは何もできない。

 本来、いろいろな情報を有権者が得て投票するのが選挙の基本中の基本。インターネットというものすごく素晴らしいツールを手にしたことで、ビジネスも産業もどんどん発展している。なのに、実際には民主主義と政治の発展だけ阻害されているんです。本来なら、いままで政見放送や新聞で伝わらなかった情報をインターネットで有権者が入手できるはずなのに」

解禁が実現しないのは、ネチズンが与党にナメられてるからだ

── 民主党は、昨年の法案提出ですでに4回目ですね。一方、与党である自民党は、ネット解禁の方針を打ち出しつつも、いまだ一度も法案を提出していない。

「2005年の衆院選までは、ネットユーザーの民主党支持が圧倒的に高かった。ネットユーザーの7割が民主党支持という世論調査もあった。解禁すれば自民党に不利になるから、法案が通らなかったんです。そこは非常にわかりやすい。これが、ネットが解禁されない最大の理由で、あとは投票率が上がると公明党が困るから、というのもあるんでしょうね。現在の公選法は、政治的な情報を国民に伝わらないように伝わらないようにする法律。つまり“寝た子を起こさないようにする法律”ということです」

ネット選挙解禁が実現しない要因を語る民主党の鈴木寛・参院議員=07年5月、東京・永田町で(撮影:吉川忠行)
── しかし、総務省も2001年に「IT時代の選挙運動に関する研究会」を発足させ、翌年にはネット解禁に向けた報告書を出しています。

「政府もそういう方針を出しています。解禁の程度はいろいろありますが、いままだ全く解禁しないというのは、自民党だけでしょう。

 さきほどネットユーザーの7割が民主党支持とお話ししましたが、2005年の郵政選挙の際には、自民党と民主党の支持が同じくらいになっていました。そこで自民党では武部勤さん(当時・幹事長)が、ネットを解禁する方針を公示直前に表明しました。それをネチズンが信じて、自民党に投票したんです。

 自民党の世耕弘成さんがネット選挙のワーキンググループの座長に就任されて、部分解禁の方針を打ち出しました。民主党は全面解禁の立場ですが、民主主義の発展のために、部分解禁案でも、私たちは同調するとのサインも出していました。しかし、ワーキンググループがまとめた部分解禁案ですら、自民党の選挙制度調査会では反対され、今日にいたっています。当時の自民党幹事長が解禁すると言っておきながら、2年近くたって4回の国会を経ているのに、いまだ法案は成立していない。これは明らかな公約違反です」

── 解禁が実現しない最大の要因は?

「最大の理由は、日本のネチズンが自民党にナメられているからです。公約違反の事実がありながら、ネットでは炎上してない。昨年の通常国会で法案が出なかった時点で、ふつうならもうボコボコですよね。なのにネット上ではなんの反応もない。だから『ああ、こんなもんなんだ』と自民党からナメられている。『公約違反しても日本のネチズンは見逃してくれる』と。また、公約違反をマスメディアが何も報じないのも問題です」

── 新聞などは、選挙の前後になるととりあえずネット解禁の話題を取り上げますね。

「2006年の新春号で毎日新聞が大特集をやりましたね。そこで、世耕さんとぼくと、2ちゃんねるの西村博之さんで対談をしました。でもそれ以降、マスメディアは自民党が解禁を実行しないことを報じないし、ブログでも誰も書かない。

 かつて自民党に40人ものブロガーが呼ばれて、武部さんのブログを書かされた。そこまではいいけど、武部さんはみんなに解禁を約束したのに果たしていないことについては、誰もブログで書かない。結局、武部さんに騙されただけと言われても、仕方ないのではないでしょうか?

 ちゃんと、ネット解禁の国民運動をやるべきです。本当にインターネット社会を作りたいというのであれば、ネット上でオーソドックスに主張すべきなんですよ。それをしないから(自民党に)ナメられるんです」

「IT戦略会議」はウソっぱちなのか?

── ネット解禁については、「なりすまし」対策を理由にした慎重論がありますが。

「法的な対応策はいくらでもあります。たとえば、選管がサーバーを設けて候補者のHPはそこを使うようにする。メールアドレスもそこが出せばいい。

 そもそも、日本はなんのために電子署名制度を普及させたんですか?なんのために電子署名法を作ったんですか?それにもとづいて、すでに莫大な商取引が行われてる。自動車を買う人までいる。何十億円にもなる不動産取引だって、不動産登記は電子化されている。政府は、電子署名制度を自信を持って設計して世の中に出してるわけではないんでしょうか。それとも、国は国民に対して、いい加減なものを出して『取引に使ってください』と言っているんでしょうか。

 ネット選挙でなりすましが心配だと言うなら、電子取引、電子税務申告、その他の公文書の電子申請だって。なりすましは心配じゃないんですかね。IT戦略会議の掲げる電子政府はウソっぱちなんでしょうか。

 与党政府は、いままで一生懸命IT政策をやってきたのに、それを自己否定しているのか、と尋ねたい。ぜひ、この点について自民党に反論してもらいたいですよね。商取引が危ないのか。それとも、なりすましの問題を解禁に反対するための理屈として使っているのか。はっきりさせて欲しい」

── 解禁案の内容についてですが、民主党案と自民党案の最大の違いは、メールも解禁するか、それともHPだけの解禁にするか、ですね。

「民主党案は、HPだけではなくメールとブログも解禁。自民党案はメールとブログは禁止のままで、HPだけ解禁させようというものでした。

 ぼくらは、自分たちの全面解禁案がいいと思っています。しかし、たとえ半歩だけでも前進させようと、解禁の第1弾としては世耕さんの部分解禁案でもいいと思っています。そのことは昨年からずっと自民党にも伝えている。

 昨年、法案を提出する前にも、自民党と折衝して会期末ギリギリまで待ちました。民主党内で『これを政争の具にしない。まずは半分でも解禁させよう』という意見でとりまとめ、世耕さんにも直接伝えた。でも全く自民党から党としての正式な返答がないので、民主党案を提出したんです。

 昨年も、公開の場で自民党に『うちの案の中で、のめる部分だけチョイスしてくれ』と言ったんです。いまから法案作成するのも大変だろうから、自民党がメニューをつまみ食いしてくれれば、法案もすぐ出せるし、すぐ成立する。うちはそれでもいいよ、と。うちはフルパッケージだけど、自民党はただちにのめないところもあるでしょうしね。

 それでもなお、自民党からは反応がない」

ネチズンよ、立ち上がれ!

── どうすれば解禁を実現できるんでしょうか。

「解禁されるかどうかは、ネチズン次第。ぼくはネチズンに頑張って欲しい。ぼくも、ネチズンの1人として一緒に頑張ります。民主党で法案を何回も出していますが、それだけでは盛り上がりません。たとえば、ネット署名などで数を集めれば、自民党だって動きますよ。アメリカや韓国では、ネットが政治を動かしているんですから」

── 日本でもネットが解禁されて何年かたてば、ネットの動向によって政治が変わるようになる?

「有権者の投票行動を決めるのは、投票前の最後の1週間です。この間にHPを更新できるようになるだけでも、劇的に変わると思いますよ。だからぼくらは、まずは部分解禁案でもいいと言っているんです。もちろん、理想は全面解禁ですが」

── ネット解禁のためには、メディアの持つ役割も重要ですね。

「そうです。メディアにも頑張って欲しい。新聞などに、『2005年の選挙の際にネット選挙だと言って書いていたのに、その後フォロー取材もしないのはおかしい』と言っても、なんの反応もないんです。もしオーマイニュースのキャンペーンでネットが解禁されたら、私があらゆるところで公言しますよ。『オーマイニュースが頑張ったから解禁されたんだ』って、一生言いつづけます」

── 素晴らしい“公約”をありがとうございます(笑)。頑張ります。


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