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電話でも「なりすまし」ができるトンデモ公選法ネット選挙運動を即刻解禁せよ! 第5回藤倉 善郎(2007-06-15 19:02)
第4回の永田あつし市議へのインタビューでは、ネット選挙運動関連以外でも、公職選挙法にまつわる興味深い話を聞くことができた。今回は、それをもとに公職選挙法のトンデモぶりを見てみよう。
ネットは使えないのに電話は無制限 永田市議は、ホームページ(HP)やメールによる選挙運動も、文字ではなく音声なら法的に問題がないという主張に関連して、「(公職選挙法で)文書の配布は制限されていても電話は無制限」という点を指摘していた。 ── 電話については、全く規制がないんですか? 「そうです」 ── 例えば夜中の12時に「○○に清き1票を」という電話をかけまくることも、法的には許される? 「そうです。もっとも、そんなことをすれば、かえってその候補者の評判は落ちますが、法的には可能です」 公職選挙法の条文をひもといてみると、「電話」という言葉は2カ所しか出てこない。 1カ所目は、選挙運動に関する支出権限について定めた第187条で、「電話による選挙運動に要する支出を除く外、選挙運動に関する支出は、出納責任者でなければすることができない」というもの。 2カ所目は、「氏名等の虚偽表示罪」に関する第235条の第5項。「真実に反する氏名、名称又は身分の表示をして郵便等、電報又は電話により通信をした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金」という条文だ。 電話での選挙運動を規制していないどころか、むしろ「原則自由」で、虚偽の氏名や名称を名乗って電話をかけることを禁じているだけ。「原則禁止」が信条の公選法には珍しい例外だ。 電話でもできる「なりすまし」 しかし、虚偽の氏名や名称を名乗る電話を、実際にはどのように防止できるのだろうか。記者は以前、某政党の支持者からこんな話を聞かされたことがある。 「実は、うちの党と対立する某党の連中は、選挙期間になると、うちの党の候補者の名前でしつこい選挙運動電話をかけて選挙妨害をしている」 その話の真偽はわからないが、やろうと思えばいくらでもできることには違いないだろう。 ネット選挙運動の解禁に慎重な人々の間では、「ネットではなりすましができてしまうから」という意見がある。しかし、それを言うなら公選法で全く規制されていない「電話」も同じなのだ。 本当に、ただ「時代遅れ」なだけなのか? 公選法は、戸別訪問による選挙運動を禁止している。これは、戸別訪問が金品のやりとりなどの選挙違反の温床になるからだ、という説明をよく耳にする。 しかし欧米では、むしろ戸別訪問が古くから選挙運動の主要な形態だったとも言われている。 戸別訪問の禁止は、大正時代に成立した普通選挙法でも定められていた。しかし第2次大戦直後、GHQは文書図画だけではなく戸別訪問の解禁も提唱したようだが、結局、旧来の選挙法を踏襲する形で、1950年に公職選挙法が成立し、日本は民主的な政策選挙の条件を整える機を逸してしまった。 戸別訪問の禁止に関して言うなら、戦前の選挙の実態を踏襲しただけの時代遅れの規定だと見ることもできなくはない。 ネットでの選挙運動がほぼ完全に禁止されている点もあわせて考えれば、確かに公職選挙法は時代遅れではある。 ネット選挙運動の解禁を求める木村剛氏が、ブログ「週刊!木村剛」の2005年8月31日のエントリーで書いた「ちょうちんは良くて、ブログはダメなのか?」という言葉は、公選法の時代遅れっぷりを皮肉った名言だ。 なぜ車から名前を連呼するだけなのか 公選法を読んでみると、「時代変化のせい」とは考えにくい不可解さもある。 そのひとつが、第141条の第3項。「車上の選挙運動の禁止」だ。 「何人も、(略)自動車の上においては、選挙運動をすることができない。ただし、停止した自動車の上において選挙運動のための演説をすること及び(略)自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすることは、この限りでない」 公選法上、車上での選挙演説が許されているのは停車中のみ。故に走行中は「名前の連呼」しかできない。禁止だらけで選挙運動の定義がないとはどういうことか(写真はイメージ、撮影:吉川忠行) 政策を語らず大声で名前だけを連呼する候補者に辟易(へきえき)している有権者は多いと思うが、それは公選法がそういう選挙運動をするように定めているからなのだ。 公選法は、政策本位の選挙をさせないために作られた法律なのかもしれない。 それよりも、公選法最大のミステリーは、これだけ懇切丁寧に選挙運動に関する禁止行為を定めていながら、「選挙運動の定義がない」点だ。 まったくもって、とんだスクラップだ。 【編集部注】一部字句を修正しました。(2007/06/15 19:15) ネット選挙運動を即刻解禁せよ! トップページへ バックナンバー
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