総合

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

大相撲:八百長疑惑報道訴訟 講談社などに4290万円賠償命令--東京地裁

 ◇名誉棄損で最高額

 横綱朝青龍ら力士30人と日本相撲協会が、八百長疑惑を報じた「週刊現代」の記事で名誉を傷付けられたとして、発行元の講談社や執筆者のフリーライター、武田頼政氏らに計約6億1600万円の賠償などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。中村也寸志裁判長は「記事が真実との証拠はない」と述べ、総額4290万円の支払いと記事を取り消す広告の掲載を命じた。名誉棄損訴訟の賠償額としては過去最高とみられる。

 問題となったのは、同誌が07年2月3日号から3回にわたって掲載した「横綱・朝青龍の八百長を告発する!」などと題する記事。

 中村裁判長は、取組の不自然さを指摘した元小結板井の証言を「主観的な意見に過ぎない」と退け、武田氏が八百長の根拠とした力士ら2人の話も「2人の詳しい属性は明らかでない上、八百長の合意や金銭授受の状況も見ておらず、八百長の裏付けにはならない」と判断した。その上で「八百長が認められれば力士生命にかかわり、協会も存立の危機になる。記事は衝撃を与える内容だが、取材は極めてずさんだ」と指摘した。

 認められた賠償額は▽八百長の中心人物と報じられた朝青龍が1100万円▽相撲協会が660万円▽元大関栃東ら6人が各220万円▽横綱白鵬ら8人が各110万円▽関脇稀勢の里ら15人が各22万円。

 一連の八百長報道をめぐっては北の湖前理事長と協会が原告になった訴訟でも、東京地裁が今月5日、1540万円の賠償を命じ、講談社側が控訴している。【銭場裕司】

 ◇日本相撲協会の武蔵川理事長の話

 勝訴を喜んでいる。八百長報道に何らの根拠もなかったことを認めたもので、意義は大きい。

 ◇乾智之・週刊現代編集長の話

 公益法人としての存在意義が問われるいま、判決で協会に対して改革を求める機会が失われることを危惧(きぐ)する。控訴に向けて検討する。

 ◇高額化に弾みも--名誉棄損訴訟に詳しい梓澤和幸弁護士の話

 驚きの金額で、さらに高額化に弾みがつく可能性がある。反論する機会を持てない一般私人に対する賠償額はいまだ低いので、社会に高額化が受け入れられる要素はあるが、メディアの萎縮(いしゅく)を招く恐れもある。

 ◇表現に威嚇効果--田北康成・立教大講師(メディア倫理法制)の話

 表現に対する威嚇効果が大きく問題だ。日本では公人からの訴訟でも、取材を尽くしたかどうかの証明は報道機関側に求められ、取材源の秘匿などから不利な立場にある。根本的な議論が不可欠だ。

==============

 ■高額の賠償が命じられた主な名誉棄損訴訟■

判決      原告         被告      賠償額

01年 3月  清原和博選手     小学館     1000万円

03年10月 ★熊本市の医療法人など 新潮社など   1980万円

07年 6月  杉田かおるさんの元夫 小学館      800万円

08年 2月  日本音楽著作権協会  ダイヤモンド社  550万円

09年 1月  三木谷浩史楽天社長ら 新潮社など    990万円

    3月  元横綱北の湖ら    講談社など   1540万円

 ★は東京高裁判決。ほかはすべて東京地裁判決

毎日新聞 2009年3月27日 東京朝刊

総合 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報