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ネット選挙運動を即刻解禁せよ!

【キャンペーン】ネット選挙運動を即刻解禁せよ!

“原則禁止”の公選法を打ち壊そう

藤倉 善郎(2007-05-16 21:45)
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 4月の統一地方選挙は、公職選挙法改正によって、首長選で「ローカルマニフェスト」配布が可能になった初めての選挙だった。

 ところが、配布できるローカルマニフェストは、A4判でたった1ページのビラにすぎない。配布枚数も制限され、たとえば東京都知事選挙でもたった30万枚。もちろん、インターネットでの配布は自治省(現・総務省)の公選法「解釈」によって禁止されている。

多くの人がネットで情報収集する現代。いつになったらネット選挙は解禁になるのか(写真はイメージ、撮影:吉川忠行)

 これでは、ほとんどの有権者が、自宅でじっくり候補者の政策を吟味することなどできない。

 すでに、多くの人々にとってインターネットが主要な情報収集ツールになっている。にもかかわらず、日本の選挙制度は完全に取り残されている。数年前からネット選挙運動の解禁を目指す動きはあるが、いい加減、解禁に踏み切るべきではないだろうか。

有権者に情報を与えないのが現行の公選法?

 先の統一地方選挙で、告示後のHPアクセス数が5倍にもなったにもかかわらず、選挙情報を掲載できなかったのが民主党だ。

 同党インターネット選挙活動調査会会長の鈴木寛参院議員が言う。

 「他の先進国ではネットでの選挙活動が解禁されており、解禁されていないのは日本くらいでしょう。もともと海外では選挙活動は“原則自由”で、禁止行為が法律で定められています。そのためネット選挙活動を解禁する際にも、禁止行為を定めればいいだけで大規模な法改正は必要がなかった。ところが、日本の公職選挙法は“原則禁止”というコンセプトで作られている。法律に書かれたこと以外は、やってはいけないんです」

「日本の公選法は“原則禁止”のコンセプトで作られている」と問題点を指摘する民主党の鈴木寛議員(撮影:吉川忠行)

 ウェブサイトやメールは、公職選挙法が公示・告示後の配布を制限している「文書・図画」にあたると考えられている。

 ここで許されるのは枚数を制限されたビラやハガキなどで、それ以外は “原則禁止”というわけだ。これに違反すれば「2年以下の禁固又は50万円以下の罰金」を課される。

 「選挙運動は判例で、『特定の選挙で1票を得る行為』と定義されており、HPやメールの内容が選挙運動にあたると判断されれば、候補者によるものでも第三者によるものでも公職選挙法違反になります。しかし総務省にも選挙管理委員会にも、特定のケースについて違法かどうか判断したり指導や勧告を行う権限はありません。指摘や問い合わせを受けた際に『解釈』を伝えるだけです」(総務省自治行政局選挙部選挙課)

 総務省に「権限がない」以上、摘発するかどうかや違反かどうかを判断するのは警察と裁判所。実際にそのときになってみないと違法かどうかはハッキリしない。

 「民主党で新しいことを試しては総務省などに指摘され、それによって事実上の“禁止行為”の基準ができあがっている状態」(前出、鈴木議員)

 2005年の衆院選挙公示後に民主党がHP上で選挙情報を掲載した際、自民党が総務省に通報。民主党は総務省の指摘を受けて、以後、公示・告示後の選挙情報の掲示をやめている。

 しかし、このとき通報した自民党サイドでも、公示後に党のHP内掲示板で選挙の話題が出ていたり、山本一太参院議員がブログに選挙情報を追加しているなど、ちぐはぐな動きになっていた。

 時代に逆行した公選法が混乱の原因になっているようにしか見えない。

解禁はHPのみ? それともメールも?

 ネット選挙運動解禁のための公選法改正の動きは、以前からある。民主党では1998年以降、4回にわたり法案を国会に提出している。総務省も2001年に「IT時代の選挙運動に関する研究会」を発足させ、02年の報告書で、公開解禁の方針を打ち出した。しかし民主党が06年6月、今年の参院選までの成立を目指して4度目の法案提出を行ったが、継続審議となっている。一方、自民党では、党内のワーキンググループが06年5月に最終報告を作成。これを基に現在、今年の参院選までの法案提出と成立を目指して公明党との調整に入っている。

 自民・民主の方針の最大の違いは、メールを解禁するかどうか。

 民主党案はHPとメール両方での選挙運動の解禁を目指しているが、自民党はメールによる選挙運動を解禁しない方針だ。その理由は「なりすましや誹謗中傷を防ぐため」(自民党選挙対策本部)。これに対し、民主・鈴木議員はこう主張する。

「HPでもメールでも、選挙管理委員会が設置したサーバーを通したものだけを許可するなどの方法をとれば、なりすましは防げるし、誹謗中傷などの違反行為にも対処できる。それに、それほどネットの『なりすまし』が怖いというなら、行政の『電子証明制度』なども危ないということになる。政府の『IT戦略会議』はウソっぱちなのか?」

 民主・インターネット選挙活動調査会事務局長の田嶋要衆院議員は、メール解禁の必要性をこう解説する。

「公選法で禁止されていても、怪文書はすでにメールなどでも出回っている。メールを解禁しなければ、誹謗中傷された候補者がメールで反論することができない。また、いま法案で想定しているのはHPとメールだが、総務省による研究会報告以降だけでも、ブログやSNS、YouTubeなど、さまざまな新サービスが出てきている。『あれはダメ、これはダメ』というコンセプトで改正しても、次々と現れる新しいサービスに対応できない。むしろ汎用性がある形で禁止行為を定める形にするのが望ましい」

 現在、総務省では「02年の報告書で一段落。今後どうするかは、国会で法案が可決されてからの話」としている。つまり、解禁までの道のりはあと一歩のところまできているのだ。

 鈴木議員も、民主党法案の成立にこだわるのではなく「あくまでも解禁第1弾としては、HPだけの解禁でも構わない」として早期解禁を目指し、自民党に対して歩み寄る提言を行っているという。

「解禁直後には、さまざまな問題が起こると思います。しかし、ネットでの選挙運動が可能になれば、有権者の政治を見る眼が養われる。そこには、質のいい民主主義と市民参加に向けた無限の可能性がある」(田嶋議員)

 ネット選挙運動の解禁は、単にインターネット上の問題にとどまらず、有権者に情報を与えないようにできている“原則禁止”の公選法を打ち壊す第一歩になるかもしれないのだ。

 なんとしても、この夏の参院選までに実現してもらうよう、小紙ではあらゆる努力をしていくつもりだ。(つづく



【関連リンク】
民主党「インターネット選挙運動解禁法案」(要綱・解説・法案)
総務省「IT時代の選挙運動に関する研究会


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