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今どきお産事情:/7止 低い予防接種率 怖い感染症、流産や胎児奇形の恐れ

 ◇麻疹、風疹など4種類の免疫必要

 「失望した」--。今年2月、東京・霞が関で開かれた麻疹(ましん)対策を考える厚生労働省の会議で、出席者からため息が漏れた。昨年4月から始まった中学1年と高校3年での麻疹ワクチンの接種率が6割前後にとどまったのを受けた発言だ。

 07年、10~20代に麻疹が流行した。将来、母親になる世代だけに感染者本人だけでなく、胎児や乳幼児の健康を考える上で軽視できない数字だった。

 予防接種には、(1)予防接種法に基づき市区町村が費用を負担する「定期接種」(2)希望者が自己負担で受ける「任意接種」--の2種類ある。麻疹は風疹との混合ワクチン(MR)として定期接種の対象になっている。

 国立感染症研究所の多屋馨子室長(小児感染症学)は「妊娠前の女性が特に獲得しておきたいのが麻疹や風疹、水ぼうそう、おたふくかぜの4種類の感染症に対する免疫だ」と言う。発症すれば妊婦の重症化に加え、流産や赤ちゃんの奇形などの危険性がある。いずれも感染力が強い。しかし、8~18歳を対象に昨年実施した検査で、陰性または陽性でも抗体の量が少ない人の割合は麻疹で10~20%、風疹で20~40%だった。任意接種の水ぼうそうとおたふくかぜの予防接種率は約30%と低迷している。

 現在、MRワクチンは1歳時のほか小学入学前1年間、中学1年、高校3年のそれぞれに相当する年齢時に無料接種が受けられる。今月末までの対象は、小学入学前(02年4月2日~03年4月1日生まれ)▽中学1年生(95年4月2日~96年4月1日生まれ)▽卒業生を含む高校3年生(90年4月2日~91年4月1日生まれ)--だ。多屋室長は「こうした感染症はワクチンという方法で予防できる。母子ともに健康であるよう、ぜひ接種してほしい」と呼びかける。

   ◇  ◇

 任意接種の中でも、ヒブ(インフルエンザb型菌)ワクチンは昨年12月の販売開始以来、関心が高い。死亡や後遺症も心配される細菌性髄膜炎で、およそ3人のうち2人はヒブが原因だからだ。

 ヒブワクチンは、生後2カ月以上7カ月未満の赤ちゃんは、1回目の接種から4~8週間隔で3回、1年後にもう1回▽生後7カ月以上1歳未満は、1回目の接種から4~8週間隔で2回、1年後にもう1回▽1歳以上5歳未満は1回--が一般的な接種の仕方。定期接種のジフテリアと百日ぜき、破傷風の3種混合ワクチン(DPT)と同時に受ければ、通院回数が減り、母子の負担が軽減できる。

 ヒブワクチンの1回当たりの費用は約7000円。関心の高さから需要に供給が追いつかず、3月から販売元が医療機関への供給を制限するなど品薄気味だ。「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(大阪)の田中美紀代表は「供給制限によって受けられない人が出るのが心配。こうしたことがないよう国はヒブワクチンを定期接種化してほしい」と訴える。=おわり

   ◇  ◇

 この企画は斎藤広子、須田桃子、河内敏康が担当しました。

 ◆記者の体験

 ◇ヒブワクチン、近所では「在庫なし」

 娘の出産から約1カ月後の昨年11月、新生児を対象とした保健師の家庭訪問があった。娘の健康状態をチェックしたほか、無料の予防接種の受け方について説明してくれた。

 その後、育児に追われて忘れていたが、今年1月、初めて参加した地域の赤ちゃん教室で、同じ月齢の子がすでに接種を始めていると知り、近所のクリニックで、BCG(結核)を予約した。

 当日は、娘の体温や体調をチェック。母子健康手帳別冊に付いている予診票に発育歴などと併せて記入、接種希望欄に署名した。副反応は特になく、ほっとした。その後、DPTを2回受けた。4月には、その3回目とポリオ(小児まひ)の集団接種を受ける。

 母親仲間で話題になっているのがヒブワクチンだ。任意接種で、1回当たり約7000円と高額だが、ヒブによる髄膜炎などを発症すると、死亡したり後遺症が残る恐れがある。夫と相談し、受けることにした。

 近所の小児科2カ所に問い合わせると、予約殺到でいずれも「在庫なし」の回答。片方に予約を入れたが、1カ月過ぎてもまだ入荷の連絡がない。医師は「足りなくなる状況は予想できたはずで、国の対策が遅れている」と漏らしていた。同感だ。【須田桃子】

毎日新聞 2009年3月27日 東京朝刊

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